「最近、誰かに尾行されているみたいなんだ」
先月、ロンドン在住の香港人男性が通信アプリでそう打ち明けてきた。男性とは取材で知り合ったが、今は友人関係でもあり、通信アプリや電話で毎日のように連絡をとりあっている。週末に一緒に食事をすることも少なくない。
男性は先月、レストランや駅などで毎日のように尾行の被害に遭い、尾行者とみられる男の写真などを通信アプリで私に送ってくれた。自宅のマンションの窓にカメラを搭載したとみられるドローンが飛んできたこともあったという。
男性は在香港英国総領事館の元職員で、2019年8月に中国本土出張時に拘束され、英政府の民主化デモ関与の自白を強要された。香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑でも指名手配されている。英国への政治亡命が認められてからも、尾行などの嫌がらせを受けてきた。
しかし、連日繰り返される尾行は経験がなかったそうで、「中国による監視が強まったのかもしれない」と不安を口にした。
男性は渡英後に始めた香港人の移住者を支援する活動を最近拡大したため「中国側が彼に警告を発したのでは」(香港問題の英専門家)との見方もある。民主主義国家に逃れても安全が保証されない事態に危機感を感じた。(板東和正)