神戸の中心部、阪急神戸三宮駅前で市民が思い思いの時間を過ごす「さんきたアモーレ広場」。昨秋に大規模改修が行われ、テーブルともベンチとも言えない楕円(だえん)の造形物が特徴。腰を掛けたり、寝転んだり、もたれたり…。一人一人が使い道を発見し思い思いの時間を過ごしている。「建築と社会とがコミュニケーションをとっている」。広場を設計した津川恵理さんはそう話す。
「身体表現をするエンターテイナーになりたかった」という津川さん。幼いころからダンスや演劇などにひかれ、その夢を育んだ。神戸女学院高卒業時の進路選択、当初は劇団のオーディションに参加したりしていたが、未成年だったこともあり、いったん大学受験の枠内で夢に近づける道を探すことにし、見つかったのが建築。京都工芸繊維大学に進学し、卒業後は早大院で建築を学んだ。
修了後は大手設計事務所で社会人としてのスタートを切り、東京五輪の準備にも携わった。社会から求められる建築を緻密に提供する組織に学ぶことは大きかったものの、昔から身体表現にひかれていた自身のクリエイティビティを発揮したいという思いも募る。
平成30年、一念発起して米ニューヨークの建築事務所「DS+R(ディラー・スコフィディオ+レンフロ)」の門をたたいた。DS+Rは大学や病院の設計も行う一方、現代美術やファッションなどの前衛的な仕事も手がけることで知られている。津川さんもプラダのバッグのデザインなどに携わることになった。