複雑で速い海流、捜索阻む 知床観光船沈没事故1カ月

産経ニュース

北海道・知床半島沖で観光船「KAZU I(カズ・ワン)」が沈没した事故は23日で発生から1カ月。これまでに14人の死亡が確認された一方、12人が今も行方不明となっている。第1管区海上保安本部(小樽)はロシアと調整した上で、北方領土・国後島周辺に範囲を広げ、捜索を続行。水深約120メートルの海底で発見された船体は、21日から引き揚げに向けた作業が始まっており、間もなく海上に姿を見せることになる。

乗客は、世界遺産として知られる知床の自然を、海から存分に楽しむはずだった。

事故が起きた4月23日は、知床半島一帯に波浪注意報が出ており、地元の漁船は出漁を見合わせていた。運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(58)によると、同日朝、豊田徳幸(のりゆき)船長(54)=行方不明=から「海が荒れる可能性はあるが大丈夫」などと報告があり、状況に応じて途中で引き返す「条件付き運航」を決断したという。

午前10時、乗客乗員26人を乗せたカズ・ワンは斜里(しゃり)町のウトロ港を出港。午後1時13分ごろ、カズ・ワンが浸水しているとの118番通報があったが、海上保安庁のヘリコプターが現場周辺に着いたのは約3時間後の午後4時半ごろ。翌24日には乗客11人が見つかり、28日にも3人を発見、いずれも死亡が確認された。

沈没した現場は海流が速く、水難学会が実施したシミュレーションでは行方不明者は事故現場から北方に190キロ以上流されている可能性がある。ロシアが不法占拠する北方領土・国後島の西岸では5月6日と19日に、行方不明者の可能性がある女性と曽山聖(あきら)甲板員(27)の可能性がある遺体がそれぞれ見つかった。

沈没10日後に船内撮影

カズ・ワンの船体は、救助要請があった「カシュニの滝」から西北西約1キロの沖合に沈んでいた。

事故発生から6日後の4月29日午前、海上自衛隊の掃海艇の無人機が水中カメラで捜索。その結果、カズ・ワンは船底を下にして、水深約120メートルの海底で右に30度傾いた状態で発見された。

船体には両舷と後方にドアが設けられているが、捜索では、後方のスライド式ドアと左舷側のドアが開いたままの状態だったことが判明。さらに、5月3日には北海道警の水中カメラが、左舷側のドアから船内に初めて進入し、客室や操舵(そうだ)室を撮影した。これにより、天井部分の一部が剝がれて電線が垂れ下がっている様子や、オレンジ色の救命胴衣が確認された。

船体の周囲には10メートル以上の大きな起伏はないが、潮の流れも速く視界も悪いことから調査は難航。船体が右に傾いているため、船外からの捜索は限られた方向からしかできない状態だったという。

また、19、20日には、深い海でも活動可能な「飽和潜水」による捜索が、海上保安庁から依頼された専門業者の潜水士によって行われた。しかし、これらの捜索で、行方不明者の姿を船内で確認することはできなかった。

進水から37年/昨年2度事故

カズ・ワン(19トン)は定員65人の小型旅客船で、昭和60年2月の進水から37年が経過していた。

運航会社「知床遊覧船」が国土交通省北海道運輸局に提出した資料によると、船体の材質は繊維強化プラスチック(FRP)。ディーゼルエンジンを積み、最大速力は19ノット(時速約35キロ)だった。

昨年5月、漂流物にぶつかって乗客3人が軽傷を負う事故を起こしたほか、同6月にも浅瀬に乗り上げる座礁事故を起こし、国交省が特別監査を実施していた。

同社は同7月に改善報告書を提出したが、改善内容は順守されなかった。

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