小林繁伝

「クリーンな野球」掲げた長嶋、川上との亀裂 虎番疾風録其の四(51)

産経ニュース
解説者となった川上(左)とにこやかに話す長嶋監督=昭和54年、甲子園球場
解説者となった川上(左)とにこやかに話す長嶋監督=昭和54年、甲子園球場

御大・川上と長嶋監督との関係にいつ〝小さな亀裂〟が入ったのだろう。

当時、巨人を担当していた清水満先輩によれば「2人が選手と監督の間はとても仲が良かった」という。だが、長嶋が引退を決め、次期監督として組閣を始めたころに、関係がおかしくなり始めた。

「川上さんは長嶋さんのことを心配して、チームを熟知している牧野をヘッドコーチとして残した方がいい―とアドバイスした。そして投手コーチには藤田元司(当時はスカウト)を推薦したんだ」

球団もヘッドコーチを誰にするか―には気を使っていた。

①長嶋の横にいて的確なアドバイスのできる人

②長嶋と選手の〝パイプ役〟を演じられる人

③長嶋政権が失敗したとき、長嶋に代わって〝悪者〟になれる人

候補には牧野の他に千葉茂の名前も挙がった。だが、長嶋は拒否した。長嶋は「自分の内閣」を作りたかった。

「それはけっして悪いことじゃない。誰でもそう考えるだろうし、ごく自然の発想だと思う。ただ、長嶋さんの心の中には、もうV9時代の野球は古い―という思いがあったのは事実。ただ勝つための野球ではなく、ファンを楽しませ魅了する野球を目指したかった。それがクリーン・ベースボール(鮮やかな野球)」

川上はその「クリーン」という言葉に引っかかったという。そして長嶋監督のあの発言。

「いままで自分たちが積み上げてきたものを総チェックする。その上で新たなスタートを切りたい」

川上にはV9野球の否定に聞こえたのである。

「クリーンな野球を目指すとはどういう意味だ。いままで一緒にやってきた野球が〝汚い〟とでもいうのか。何を生意気な。何様だと思っているんだ!」

川上は知人に怒りをぶつけたという。

「いったん裏切られた―という思いが生まれると、あれも、これも、とすべてが悪い方に見えてくる」

清水先輩によれば、球団が日本ハムの張本獲得を拒否したのも、川上には〝長嶋の反抗〟と映っていたという。心のちょっとしたすれ違いで生まれた亀裂だった。(敬称略)

■小林繁伝52

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