老老介護を描いた「ぼけますから…」続編 長期上映の舞台裏

産経ニュース
病室で信友文子さん(右)の手を握り声を掛ける夫の良則さん(C)2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会
病室で信友文子さん(右)の手を握り声を掛ける夫の良則さん(C)2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会

平成30年公開のドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』から4年。母の認知症と、両親の老老介護をひとり娘の目線で見つめた続編映画『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』が再び反響を呼んでいる。東京と広島ではロングランに。信友直子監督(60)が、母のみとりを通し、両親の老老介護のその後を追い続けた夫婦の物語。関係者は「生きるヒントになり得る作品と思う」と話す。

出身の広島県で映画の全国順次公開を報告し、会見に応じる信友直子監督=4月5日、広島県庁
出身の広島県で映画の全国順次公開を報告し、会見に応じる信友直子監督=4月5日、広島県庁

続編も全国100館超

東京で一人暮らしをする娘の信友監督が、広島県呉市で暮らす母、文子さん(令和2年6月、91歳で死去)と耳の遠い父の良則さん(101)の老老介護の日々を追った前作は、さまざまな世代で共感を集め、観客動員数20万人以上を記録した。

続編は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で仕事の減った信友監督が寝たきりになった母に寄り添い、老老介護をしていた父とともに、母の延命治療、入院先選びなど、さまざまな選択をしながら、母をみとる様子が描かれていく。

全国順次公開が始まったのは3月25日。約2カ月がたとうとしているが、全国100館以上で上映。上映が終了した映画館もあるが、4月1日に公開した広島市中区の八丁座では、平日でも多くの観客を動員。若い人からの共感も集めており、ロングランとなっている。

信友監督自身も各地で引っ張りだこ。舞台挨拶は40回以上。配給する「アンプラグド」の劇場営業担当、池田祐里枝さんによると「前作のファンの方も多く、強い共感をもってみていただいていた」と話す。

98歳で筋トレを開始

こんな一場面がある。平成26年に85歳でアルツハイマー型認知症と診断された文子さんは症状が進み、布団の上で泣きながら「邪魔になるけん、死にたい」と叫ぶ。普段は穏やかな良則さんが、珍しく声を張り上げ「ばかたれ!」と叱った。とても切ない場面だ。

30年9月には文子さんが脳梗塞で救急搬送される。ベッドに横たわり「手がかかるようになってごめんね」「何もしてあげられんね、ごめんね」とつぶやく文子さん。胸を締め付けられた人も多かっただろう。

その後、延命治療や施設選びなど、さまざまな選択をしていくことになる信友家。だが、良則さんは前向きだった。文子さんに任せていた洗濯や食事作りを90歳半ばで始める。

オンラインイベントを行う信友直子監督(右)と父の良則さん(C)2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会
リンゴを両手に笑顔を見せる信友文子さん(C)2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会

文子さんが入院してからは、手押し車を押しながら、毎日約1時間かけて病院へ通った。「家に帰りたい」という文子さんのために、最期まで面倒を見ると覚悟。98歳にして筋トレも始めた。

笑顔を絶やさない良則さんに、信友監督は「昔は寡黙で感情を表に出さない人だった父だが、前向きでほほえましくてユーモラス。母が明るくて前向きだったので、それを受け継いだのだと思う」と振り返る。

その後も献身的に介護を続けていた良則さんだが、コロナ禍が直撃する。

令和2年3月、コロナ対策のため、文子さんの入院する療養型病院が面会禁止に。気が気でない日々。6月1日にようやく面会禁止が解けるが、文子さんは危篤に陥り、6月中旬、眠るように旅立った。

続編公開後、広島で信友監督と舞台あいさつに登壇した良則さんが涙したことがあった。「スクリーンの中の元気な頃の母に会えたことがうれしかったようです。夢もよく見るようで『夢でも会えただけでうれしい』と」

信友監督は続編について「みとりや延命治療というテーマも含んでいる。けれど、そこだけでなく、み終わった後にほっこりする、60年連れ添った老夫婦の愛情物語でもある。人生をどう生きて、どう閉じていくか。こういう人生の閉じ方もいいなと思ってもらえたら」と語る。

長野相生座・ロキシーで舞台挨拶する信友直子監督(中央)。どの会場も大きな反響を呼んでいる=4月13日、長野市(アンプラグド提供)


葛藤を乗り越えて

昭和36年、広島県呉市で生まれた信友監督は、東京大を卒業後、森永製菓に入社。広告部に所属し「グリコ・森永事件」を目の当たりにした一人だ。このとき取材を受けたことがきっかけで映像制作の道へ。多数のドキュメンタリー番組を手掛けてきた。

前作も含め、今回の映画は文子さんが病気になるかなり以前から、信友監督がカメラの練習台として両親を撮影していたのがきっかけ。映像がテレビ番組の企画となり、映画になった。家族だからこそ撮影できた、人生の記録でもある。

葛藤に苦しんだこともあったという。「おしゃべりですごく楽しかった母がどんどん弱っていくのは、撮っていてかなりつらくなったこともあった。やめようと思ったこともある」

それでも映像の世界に身を置く者として、撮影を続けた。「ここは撮らないといけないと我慢して撮ったこともある。それを察して父が明るくしてくれた。よりユーモラスになっていったことに救われた」と信友監督は振り返る。今も引き続き、101歳で一人暮らしを続ける良則さんを撮り続けている。(嶋田知加子)

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