タイの発電所に絡む贈賄事件で不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の罪に問われた「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS、現三菱パワー)元取締役、内田聡被告(67)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は20日、同法違反の幇助(ほうじょ)罪を適用し罰金250万円とした2審東京高裁判決を破棄した。部下との共謀を認めて懲役1年6月、執行猶予3年とした1審東京地裁判決が確定する。
平成30年6月に導入された司法取引(協議・合意制度)が初めて適用された事件。MHPSは、捜査や公判に協力する代わりに法人の起訴を免れるとの内容で検察と合意した。
タイ当局者から賄賂を要求されていると部下から相談された際、被告が「仕方がないな」と発言したことが贈賄の了承に当たるかが争点。地裁は共謀があったと認めたが、高裁は、被告は消極的だったなどとして共謀を否定、幇助にとどまるとした。
同小法廷は、地裁が発電所プロジェクトの責任者だった被告の地位や相談の経緯などを考慮した上で共謀を認定したのに対し、高裁はこうした事情への評価が十分でなく「地裁判決の不合理性を示せていない」と指摘した。
判決によると、元執行役員ら2人=いずれも有罪確定=と共謀し平成27年2月、港に資材を荷揚げする際、タイ運輸省港湾局の支局長から許可条件に違反すると指摘され、黙認してもらう見返りに当時のレートで約3990万円相当の現地通貨を支払った。