北海道・知床半島沖の観光船「KAZU Ⅰ(カズ・ワン)」沈没事故で、国土交通省は20日、小型旅客船の安全対策を議論する有識者検討委員会を開き、事業者の運航管理者に資格試験を導入する案を提示した。検討委の議論を踏まえ、国交省は今後、国の監査・検査体制を見直し、検査方法を届け出制から認可制に変更するなど監視体制の強化や省令の改正に着手する。
事故後、運航会社「知床遊覧船」による恒常的な運航基準違反の疑いが次々と浮上。安全管理規程が事業者の申告任せだったことが判明した。この日の会合では、「国の監査には限界がある」などと、委員から国のチェック体制の限界を指摘する声が相次いだ。
規定では、観光船の運航中は、運航管理者である桂田精一社長(58)が事務所にいることになっていたが、事故当時は不在で、代理となる運航管理補助者も選任していなかった。
桂田社長の知識・経験不足も指摘されていることから、国交省は、関係法令や船舶、気象の知識を問う資格試験を導入する案を提示。管理者に選任後も定期的な講習受講を義務付けるとした。これに対し、委員からは、導入には適切な経過措置が必要といった声が寄せられたという。
知床遊覧船では、規程で定めた3つの通信手段いずれにも不備があったにもかかわらず、国の船舶検査で見過ごされており、委員からは検査体制の強化を求める声も上がった。
国交省によると、日本小型船舶検査機構(JCI)が検査する小型船舶は30万隻以上だが、小型船舶検査員は138人(4月現在)。国交省の案では、国主導で船舶検査を見直し、検査方法を届け出制から認可制に変更。検査現場に国が立ち会うことも検討する。
次回の検討委は今月27日に開催。船員の技量向上や通信手段などの設備要件の強化を中心に議論する。