鑑賞眼

ブロードウェイミュージカル「レント」 オリジナル演出、現代にぴったり 

産経ニュース
ブロードウェイミュージカル「レント」(ヒダキトモコ撮影)
ブロードウェイミュージカル「レント」(ヒダキトモコ撮影)

新型コロナウイルスの影響で中止となった「25周年記念フェアウェルツアー」が、2年越しで実現した。米ニューヨークに生きる若者たちをモデルに1996年にブロードウェーで初演された作品だが、その内容は驚くほど現代にマッチする。今回は、オリジナル演出版を原語で味わえるぜいたくな機会だ。

ミュージシャンのロジャー(コールマン・カミングス)は、元恋人がエイズを苦に自殺したことをきっかけに引きこもっている。新しい年を目前にしたクリスマスイブ、ロジャーが友人のマーク(J.T.ウッド)と同居するロフトに、大家のベニー(ジャレッド・ベッドグッド)が家賃(レント)を払えないなら立ち退くよう迫ってくる。

物語に大きな影を落としているのが、当時大きな社会問題だったエイズ(HIV)だ。主要人物8人のうち4人がHIV陽性で、そのうちの一人、ドラァグクイーンのエンジェル(ジャヴォン・キング)は劇中、この病で命を落とす。

他の多くの病が高齢者を狙いうちにするのに対し、セックスやドラッグといった若者に身近な感染経路で広がるAIDSは当時、「死の病」として恐れられた。男性同士の性交が感染経路のひとつであったため、ゲイ差別も起きた。現代では有効な薬が開発されたが、高額な薬を手に入れにくい途上国では、いまだ死の病だ。

本来であれば未来への夢と希望にあふれる若者を取り巻く死の影。エイズを克服しても、新型コロナやロシアのウクライナ侵攻などで、この影は今も若者たちの身近に存在する。時代や影の正体は変わったが、ジョナサン・ラーソン(脚本、作曲、作詞)の思いは、より立体的に伝わってくる。

さらに、このミュージカルが「傑作」と称される要因は、名曲「Seasons of Love」の存在が大きいだろう。52万5600分から成る1年を愛の数で測ろう、と訴えるこの曲は、クライマックスのフィナーレ近くではなく、2幕の幕開けに出演者全員によって歌われる。2幕ラストを締めくくるのは、「No day but today(大切なのは今、この瞬間なんだ)」と歌う、その名も「Finale」という曲だ。

これまで、物語は2幕から新しい年になるから、ここで「Seasons of Love」が歌われるのだと漠然と思ってきた。しかし今回の来日版を見て、「愛があれば人生のどの瞬間も輝く」という歌のメッセージを少しでも早く伝えるため、ここに挟み込んだのかもしれないと感じた。登場人物の人生が大きく動いていく2幕、「Seasons of Love」をキーに物語を追うことで、観客の心は大きく動かされる。

作品と曲の力に加え、キャストの声量ある歌声、キレのいいダンス、パフォーマンスアーティストのモーリーン(マッケンジー・リベラ)の渾身(こんしん)のパフォーマンスと、見どころはたっぷり。劇場スクリーンに、短くも的確に表示される日本語字幕もすばらしい。何より、多くの来日公演が中止になったこの2年を経て、再び日本の舞台に海外の風が吹くようになったことがうれしい。

29日まで、東京・渋谷の東急シアターオーブ。問い合わせは、0570・550・799。(道丸摩耶)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

ブロードウェイミュージカル「レント」(ヒダキトモコ撮影)
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