提訴から判決までの手続きを全面的にオンラインでできるようにする民事訴訟法などの改正案が18日、参院本会議で採決され、可決、成立した。令和7年度までに段階的に実施される。紙や対面でのやりとりが主だった民事裁判の姿が大きく変わることになる。
改正の柱は、書類のオンライン提出▽ウェブ会議の仕組みを使った審理への参加▽大量の書類を電子データで管理、ネット上で確認-の3点。
弁護士ら代理人にはオンラインでの提訴が義務化され、原告側は訴状データをオンラインで提出する。被告側は、裁判所のサーバーにアクセスして閲覧する。一方、IT機器に不慣れな「デジタル弱者」などに配慮し、代理人をつけない本人訴訟の場合はオンライン提訴の義務化から除外した。
口頭弁論も裁判所に出頭せずにウェブ会議でできるようにし、これまで遠隔地に住んでいる場合などに限定していた証人尋問も、当事者の異議がなければ可能に。離婚調停にもウェブ会議での参加を可能とし、対面せずに離婚成立ができるようになる。
憲法では「裁判は公開の法廷で行う」と定められているため、法廷にモニターを設置し、弁護士や当事者らのやりとりを画面を通して見る形で「オンライン傍聴」を可能とする。
また、審理の長期化を防ぐため、双方の合意などを条件に、6カ月以内に結審し、さらに1カ月以内に判決を言い渡す手続きを新設。ただ、当事者間の証拠収集能力に差があるケースが多いため、消費者事件と労働事件は除外する。
民事裁判のIT化を巡っては、経済界を中心に利便性などの点で国際的に後れを取っているとの批判があり、政府が改正を進めていた。