埼玉県教育委員会が、熊谷市と久喜市にそれぞれ置いている県立図書館の集約の検討に着手した。一つの施設で全ての書籍や資料を閲覧できるようにすることで利便性の向上を図る狙いがある。一方、各地域の利用者の都合に配慮し2館体制を継続する可能性や、施設数を増やす余地も否定はしておらず、年度内に基本構想をまとめて方向性を示すとしている。
県立図書館は、昭和35年から55年にかけて浦和市(現さいたま市)、熊谷市、川越市、久喜市でそれぞれ整備された。その後、施設の老朽化などに伴って2館が廃止され、平成27年4月から熊谷、久喜両市の2館体制となっている。
県教委は学識経験者らによる有識者会議を設立し、昨年5月から今年3月にかけて新たな県立図書館像について協議した。
有識者会議は報告書で、新型コロナウイルス感染拡大を受けてデジタル化が急速に進んでいる状況を念頭に、オンライン利用できる図書が少ない点などを現状の問題点として指摘した。今後については、市町村立の図書館や大学、博物館などが保有する幅広いデジタル資料の検索をできる拠点にすべきだと提言した。
県教委は、今夏に別の有識者会議を発足させ、県立図書館のあり方について検討を求める。初会合で基本構想のたたき台を示して意見を聞き、その後、県民のニーズを聴取するための会合も開催する。
県立図書館の集約は過去にも検討されたことがあるが、立地する地域の反対も根強く、実現には至っていない。県教委の担当者は「県立図書館の議論は行きつ戻りつしてきた歴史がある。新しい時代にふさわしい図書館サービスの提供を早く実現したい」と話している。(中村智隆)