書評

『東京五輪招致の研究』石元悠生著 資料価値も高い特ダネ本

産経ニュース
『東京五輪招致の研究』
『東京五輪招致の研究』

著者の石元悠生さんは記者である。それも飛びぬけた腕利きだ。その人が、自ら深くかかわった東京五輪招致について「学術論文」として書いたのが本書である。東京五輪招致委員会の会長は猪瀬直樹都知事(当時)だったが、その政務担当特別秘書、つまり参謀だったのが石元さんだ。いまは大学教員として研究者の側に軸足を移している。

本書は論文だから最初の部分は定量化の方法論と先行研究の検討に充てられているが、それに続く部分では失敗した2016年招致との比較や国際オリンピック委員会(IOC)の個々の委員の属性、日本政府のロビイング外交など、生き生きとした筆致で分析がされている。

招致をめぐる法や規則の枠組みの詳述では、IOCの性格から、わが国の法令に至るまでを洗い出している。その上でIOCや国際競技連盟から日本の各省庁、独立行政法人、競技団体、関係自治体、経済団体に至るまでを「ステークホルダー」として一つ一つに分析を加え、五輪招致の枠組みの全体像を見るうえで高い資料価値を持つ。

しかし本書の良さは実はそこから先にある。著者は敏腕記者だと書いたとおり、招致委の資料から読者が興味を持つ情報を見事に読み解いている。例えば投票権を持つ定員115人のIOC委員を属性ごとにグループ分けし、招致委がどこにどの程度の頻度でアプローチしていたかを具体的かつ詳細に分析している。さらにIOC委員に11人いる世界の王族の事前の票読みに関して、東京とイスタンブールを支持する者はゼロだが、王室が招致に積極的なスペインのマドリード支持は6人、説得により投票する可能性があるのが東京は1人、マドリードは2人という分析などは初めて明かされる情報だろう。さらに、IOC有力委員との面談記録が、委員の夫人の発言メモまで引用されているあたりは、招致活動に深く関わっていたからこそ残せた記録に違いない。

本書を論文としてみた場合には汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)(蔵書に埋もれた様子)の学者たちから方法論に異見が出るかもしれない。だが、この本の貴重さと面白さは、敏腕記者としての著者が初めて明らかにする特ダネ本という側面にあるのだと思う。(成文堂・3300円)

評・藤原庸介(流通経済大准教授)

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