大相撲夏場所7日目(14日、両国国技館)西前頭12枚目の佐田の海(35)は碧山(35)を押し出し、5連勝。碧山が初黒星を喫して全勝が消え、1敗で碧山と佐田の海の平幕2人がトップに並んだ。横綱照ノ富士(30)は平幕遠藤(31)をはたき込んで連敗を免れ、5勝2敗。大関陣は貴景勝(25)が4勝目、正代(30)は6敗目を喫した。御嶽海(29)も黒星が先行。2敗は照ノ富士、小結の豊昇龍(22)と大栄翔(28)ら7人。
活気がみなぎる。生気に満ちる。35歳。佐田の海が39キロも重い、全勝だった碧山(182キロ)を押し出して5連勝。1敗に引きずり下ろし、トップに並んだ。
「我慢して、頭を上げないように。相手は全勝だったけど、自分も好調だと思って取った」
土俵中央で突き合い、押し合いへ。碧山が根負けして引いた瞬間、懐へ飛び込んだ。5連勝は平成31年初場所で6連勝して以来と波に乗るが、「まだ半分も終わっていないし、勝ち越してもいない」。場所中の11日に誕生日を迎えた。家族はケーキを用意してくれたが「相撲に集中したいから」と、いつものような静かな時間を過ごした。
父は元小結佐田の海。年齢を重ねても、親子三役の夢は捨ててはいない。数年前から稽古や筋力トレーニングに加え、取り組んでいることがある。部屋に長いマットを敷いて下駄(げた)を履く。通常、歯は片方に2本あるが、佐田の海が履く下駄は中央に「▽」の形の歯が1つ。それを履くとつま先立ちになり、かかと立ちもできる。そして、納得がいくまでマットを往復するのだ。
土俵での足の裏の感覚を大切にする佐田の海はその下駄で感覚とバランスを磨き、今場所は「(足の裏に)力を入れると、よりよく土俵の砂が自分の足を包んでくれている感じ。砂になじんでいる」と表現した。
今場所は37歳の玉鷲、同じ35歳の碧山、そして佐田の海。この世代が前半戦を盛り上げる。トレーニング方法、体調管理の向上によって、実直に取り組み、奮励する力士の現役寿命は確実に伸びている。土俵の格言にある「3年先の稽古」。佐田の海は3年前、いまをイメージしていたに違いない。(奥村展也)