今年一番の話題作だろう。13日公開の「流浪の月」は本屋大賞受賞の傑作小説を「悪人」「怒り」の李相日監督が映画化。広瀬すずと松坂桃李が、運命に翻弄される2人を強烈なインパクトで銀幕に刻んだ。
かつて女児誘拐とされた事件の当事者が大人になり、偶然出会ってしまったらどうなるのか。許されない宿命だったのか。名作「シベールの日曜日」をほうふつとさせる物語は、ボタンをひとつ掛け違えればこうなるかもしれないという現実の怖さを感じさせる。
大人になった更紗(広瀬)が同棲(どうせい)する亮(横浜流星)に暴力をふるわれ、裸足で町なかをさまようシーンは言い知れないインパクトがある。だが、更紗の少女時代を演じた白鳥玉季の熱演も忘れられない。
松坂の徹底した体作りは有名。テレビに出るたびに「激やせ」「病気では」とファンがざわつく。今回も風呂なしのアパートでひとり寝起きして体を作ったそうだ。
ともあれ美しくも胸を締め付けるラブストーリーはこうして完成した。 (望月苑巳)