18トリソミーの子供 成長に寄り添う母子手帳

産経ニュース

染色体異常の一つで重い先天性心疾患を持つことが多い「18トリソミー(エドワーズ症候群)」の専用の母子手帳を、患者家族らでつくる団体が製作した。一般的な母子手帳ではカバーできない特有の症状や成長曲線、心疾患といった合併症などの医療情報を盛り込んだ、きめ細かな内容。情報が少なく孤独感を抱く親たちの経験をもとに、不安に揺れる家族の心に寄り添いながら、子供とともに暮らせる日々を支える。

「18トリソミー母子健康手帳」を製作したのは、患者家族らの団体「18トリソミーの会」(神奈川県秦野市)。米国のサポートグループの調査データをもとに、身体面や運動面、言葉などの成長速度が緩やかな18トリソミーの子供にあわせた体重や身長、頭囲の成長曲線を載せている。

妊娠中に診断されたとき、不安にさいなまれる母親の心理面も支える。「揺れてもいいのです、きっと赤ちゃんと出会うときの力になります」といったメッセージを記載。妊娠中に気を付けることや、心室や心房の中隔欠損、食道閉鎖症などの合併症に関する情報も詳しく載っており、「患者家族を孤立させない」という思いから、医師や看護師ら医療スタッフが書き込めるコメント欄も備える。赤ちゃんをウサギや小鳥が見守る表紙のイラストは、18トリソミーできょうだいを亡くした高校生が描いた。

昨年10月に製作し、NICU(新生児の集中治療室)を備える全国の400余りの施設に1冊ずつ無料で送付したところ、当事者家族や医療スタッフから入手の依頼が相次いだ。活用した家族からは「成長曲線や医療情報が参考になり、とても心強い」といった声が寄せられ、各地の患者家族から絶え間なく入手希望があるという。

25年前、18トリソミーで生まれた長女、千笑ちゃんを抱く桜井浩子さん(本人提供)
25年前、18トリソミーで生まれた長女、千笑ちゃんを抱く桜井浩子さん(本人提供)

「成長がゆっくりでもいい。その子ならではの情報が詰まった母子手帳があれば、子供としっかり向き合える」。そう語るのは、同会の代表として製作に携わった東京薬科大教授の桜井浩子さん。25年前、18トリソミーだった長女の千笑(ちえみ)ちゃんを生後2カ月半で亡くした。当時は情報が少なく、悩みなどを分かち合える仲間もおらず孤独感を抱いた。

18トリソミーの子供は、かつては母胎内で亡くなるケースも多く、生後1年の生存率が10%未満とされていた。医療が発達した近年では適切な治療を受けることで生存率が高まり、自宅で家族と生活できる子供も増加。中学生や高校生になる子供もいる。

「18トリソミーの会」代表の桜井浩子さん

成長や体の変化を手帳に記録しておくことは適切な治療と、ともに暮らせる日々を延ばすことにもつながる。桜井さんは「子供の生活を支えるためにも、母子手帳を大いに活用してもらいたい」と話す。

同じ染色体異常である21トリソミー(ダウン症)の子供や、低出生体重児向けの母子手帳が先行して作成されている一方で、18トリソミーは「ダウン症に比べて症状が重く、患者数も少ないので光が当たりにくい」と桜井さん。専用の母子手帳を通じて「18トリソミーの子供への理解も深めてほしい」という願いを込める。

母子手帳は同会のホームページ(https://18trisomy.com/)から申し込むことができ、送料のみ必要。日本に住む外国人向けに、英語に翻訳した電子版(PDF)も製作中だ。(横山由紀子)

18トリソミー(エドワーズ症候群) 通常は2本である18番目の染色体が3本あることで生じる先天性疾患。低体重で重度の心疾患を併発することが多い。3500~8500人に1人の割合で産まれる可能性があるとされる。

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