廃校舎 かつお節工場で再生 地域活性化、食文化の発信拠点にも

産経ニュース
廃校舎内で次々と生産されるパック詰めのかつおの削り節=和歌山県すさみ町
廃校舎内で次々と生産されるパック詰めのかつおの削り節=和歌山県すさみ町

児童数減少のため廃校になった和歌山県すさみ町の小学校が、かつお節の削り節工場として生まれ変わった。すさみ町はカツオの伝統漁法「ケンケン漁」が盛んな地域で、県内はかつお節発祥の地とされる。工場を運営する会社は地元の食文化を伝えようと、削り節体験などができる「カツオの学校」の開校も目指す。少子化による廃校舎の増加が全国的な課題になる中、伝統をつなぐ取り組みとして注目される。

校長室は応接室に

太平洋に面するすさみ町見老津(みろづ)地区。高台に平成29年3月に廃校になった旧見老津小学校がある。廃校時の児童数はわずか10人だった。

3年に建設された建物は鉄筋2階建てで、延べ床面積約780平方メートル。かつお節加工の「匠創海(たくみそうかい)」が会社を構え、削り節などを生産している。廃校翌年の30年3月、校舎の活用を模索していた町からの依頼を受けて借り、一部を改修して同年夏から事業を開始した。6人の従業員が働く。

 匠創海のかつお節削り節工場に生まれ変わった旧見老津小学校校舎=和歌山県すさみ町
匠創海のかつお節削り節工場に生まれ変わった旧見老津小学校校舎=和歌山県すさみ町

1階の教室や給食の配膳室の壁を取り払って削り節工場に。校長室と職員室は手を加えず、それぞれ応接室と事務所にしている。

匠創海の花尻明己社長(37)は「校舎は使い勝手がよくない面もあるけど、子供たちが巣立っていった場所。大切に使っていきたい」とこだわる。

工場では、かつお節削り機が大きな音を立てて稼働し、削り節が次々にパック詰めされていく。削り節のほか、だしパックやかつお粉なども製造している。

使われているのは、手で身の温度を確かめながらいぶす伝統の「手火山(てびやま)製法」でつくられたかつお節だ。グループ会社で同じく旧見老津小に本社を置く「すさみ物産」がべトナムの自社工場で生産している。

明己社長の夫で、すさみ物産の貴之社長(40)は「手火山製法はかつお節独特の臭みを取り除く製法だが、手間がかかり、あまり行われていない」と胸を張る。

食文化伝える場

人口約3700人のすさみ町は毎年100人程度の人口減少が続き、高齢化率は47%超。少子高齢化と人口流出に悩まされてきた。

一方で、船を走らせながら疑似餌をひくカツオの「ケンケン漁」で知られ、春には、身がもちもちとした「もちガツオ」と呼ばれるカツオが揚がるなど、豊かな海洋資源と伝統産業が息づいている。

また県中部の印南町は現代に通じるかつお節が江戸時代につくられた発祥の地とされる。

匠創海は会社を置く旧見老津小学校で、こうした和歌山のカツオ食文化を伝える「カツオの学校」の開校を目指している。

「カツオの学校」の校旗と匠創海の花尻明己社長=和歌山県すさみ町

新型コロナウイルスの感染拡大で令和2年の予定だった開校は延期を余儀なくされ、今後の具体的なスケジュールはまだ立てられていないが、カツオの絵と「鰹(かつお)」という漢字を用いた校章入りの校旗は完成している。

明己社長は「一般の方々に月1回程度、かつお節削りやだしとりを体験してもらいたい。運動場で年1、2回イベントも開ければ」と語る。そのうえで「校舎の中で削りたてのかつお節とご飯を食べるような店を開き、にぎわいの場にするのが夢」という。

廃校舎、民間活力で活性化

少子化の進行で、廃校となる学校が相次いでいる。文部科学省の調査(令和3年5月1日時点)によると、平成14年度~令和2年度の19年間で全国の小中学校、高校など8580校が廃校になった。年間200~500校台の学校が消えている。一方で、廃校となったあと校舎が残された7398校のうち、約74%にあたる5481校が活用されていた。

活用例としてはいずれも小学校を改修した「むろと廃校水族館」(高知県室戸市)や「京都国際マンガミュージアム」(京都市中京区)などが有名で、大学やレストランにした例もある。

ただ、活用用途のアンケート(校舎本体と体育館)では、いったん廃校にして統廃合で引き続き校舎を使うなどのケースにあたる「学校(大学を除く)」が3948件と最も多く、自治体のプールや体育館などの「社会体育施設」が1756件、公民館や図書館などの「社会教育施設・文化施設」が1330件。工場や事務所などに利用する「企業や法人などの施設」は947件にとどまっている。

複数回答で調査しているため単純比較はできないが、企業や法人の利用は少ない。工場にするには大規模な改修が必要になることなどがハードルになっているとみられる。

「廃校の民間活用と地域活性化」の著作がある中小企業診断士の波出石(はでいし)誠氏は「民間活用は地域活性化に役立つ。雇用を創出でき効果がある」と強調。「学校は地域の心のよりどころでもあるので、活用にあたってはアンケートなどで住民の理解を得ることが求められる。税金で建てた建物は最後まで有効活用しないといけない」と指摘する。(張英壽)

目標11「住み続けられるまちづくりを」 2030年までに、誰も取り残さない持続可能なまちづくりを計画し、実行する力を高める。都市部と農村部が、経済的、社会的、環境的にうまくつながりあうことを支援する。

目標8「働きがいも経済成長も」 2030年までに地方の文化や産品を広め、働く場所をつくりだす。働きがいのある仕事を増やしたり、会社を始めたりすることを助ける政策を進める。

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