楽天モバイルが求めるプラチナバンド “再割り当て”大手3社に通信サービス低下の懸念も

また、プラチナバンドであればどの周波数でもいいのかといえば、そうはいかない事情もある。なぜなら携帯電話で使用する周波数帯は標準化団体の「3GPP」で定められており、基地局やスマートフォンを開発するメーカーは3GPPで定められている周波数帯に対応するよう機器を開発している。

それゆえに携帯電話会社が、3GPPが定めていない周波数帯を利用するとなれば、その周波数帯に対応するよう基地局やスマートフォンに独自のカスタマイズが必要となるため、機器調達コストが大幅にアップし、競争上不利になってしまうのである。

実はデジタル業務用無線の移行によって、今後プラチナバンドの一部に空きができる予定なのだが、その周波数帯が3GPPが定める周波数帯とうまく一致しないことから、楽天モバイルは既存のエコシステムが利用できないとして、その周波数帯の割り当てを希望しないとしている。

プラチナバンドの“再割り当て”が通信業界に波紋を呼んでいる(Getty Images)※画像はイメージです
プラチナバンドの“再割り当て”が通信業界に波紋を呼んでいる(Getty Images)※画像はイメージです

“奪取”なら禍根を残す

ただそうなると、国内で他に携帯電話向けに割り当てられそうなプラチナバンドの空きがなく、再割り当てをするとなればどこかの周波数帯を空けなければならない。そして現在、そのターゲットとなっているのが既存の携帯3社が免許を持つプラチナバンドである。

というのも総務省では、2020年より「デジタル変革時代の電波政策懇談会」という有識者会議で周波数免許の再割り当てに関する議論を進めてきた。それは携帯各社に一度免許が割り当てられると、長年免許の更新を続けて使い続ける傾向にあることから、電波の有効利用や競争促進の観点から免許の再割り当てをしやすくする仕組みを導入するためだ。

その結果、一定の条件の下に周波数再割り当てできる仕組みを導入する方針が打ち出され、その実現のため電波法を一部改正する法案が第208回通常国会に提出されている。この法改正がなされた場合、現在免許を保有する事業者よりも電波を有効活用できるという事業者が競願を申し出ることで、審査の末に周波数免許の再割り当てができるようになるという。

要は周波数免許を他社から“奪う”ことができるようになる訳だが、これは楽天モバイルにとって、プラチナバンドの免許を他社から奪える大きなチャンスとなる。一方、他の3社からしてみれば貴重なプラチナバンドを奪われる危機が生まれたことにもつながっており、もし実際に楽天モバイルが競願を申し出て、結果として3社のうち1社のプラチナバンドが失われるとなれば、その会社のネットワークに甚大な影響が出てしまう。禍根を残すことは必至だ。

それゆえか楽天モバイルは現在のところ、3社のプラチナバンドの一部を楽天モバイルに均等に割り当てる、ある意味“痛み分け”というべき提案をしているようだ。ただ仮にこの割り当てが実現した場合、3社にはその対応のため設備工事などが必要になることから、実際に楽天モバイルがプラチナバンドを使えるようになるまで相応の時間がかると考えられる。

その時間は楽天モバイルが「1年」とする一方、最も長い時間を見積もっているNTTドコモは「10年」と主張しており、隔たりは大きい。現在その議論は総務省で続けられているようだが、プラチナバンドは携帯電話会社にとって“虎の子”であり、その再割り当ては各社の利用者の使い勝手にも大きな影響を及ぼすだけに、どのような結果が出るにしても業界の混乱は避けられないだろう。


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