「制作現場の明菜は藤倉さんとの相性も良かったので、私が知るかぎりもめることはありませんでした。価値観が合っていたのでしょう。ただ、自ら歌う作品はちゃんと選ぶし、衣装や振り付けにはこだわりを持っていて、常に自分の考えを主張するという芯の強いところはありました。ですからセルフプロデュースもできたのだと思います。とはいえ、普段の明菜は多くを語らないので、やはり人によっては不気味に思えたかもしれません。ところが画面越しでみると、すごくハキハキしていて、とにかく明るく振る舞っているのです。つまり、テレビやステージでは〝歌手・中森明菜〟を演じていたというか、意識して中森明菜という役作りをしていたのだと…。やはり中森明菜とは二面性がありながらも特別な才能を持ち合わせていたように今さらながら感じます」
その明菜で特筆すべきなのは、87年12月24日に放送された「夜のヒットスタジオDX」(フジテレビ)だった…。 =敬称略 (芸能ジャーナリスト・渡邉裕二)
■中森明菜(なかもり・あきな) 1965年7月13日生まれ、東京都出身。81年、日本テレビ系のオーディション番組「スター誕生!」で合格し、82年5月1日、シングル「スローモーション」でデビュー。「少女A」「禁区」「北ウイング」「飾りじゃないのよ涙は」「DESIRE―情熱―」などヒット曲多数。NHK紅白歌合戦には8回出場。85、86年には2年連続で日本レコード大賞を受賞している。