スピーチが上手で、自信もあり、相手が喜ぶことも言う。これらは、付き合いの浅いときには魅力的に見える要素になります。サイコパスを避けたいと思っていても、コミュニケーション量が少ない時期では、そういった傾向があることに気づくまでに時間がかかるかも知れません。「ある日、突然裏切られた」と感じる人が多いのも、そんな点が影響しているのでしょう。
他者操作性の高さという点から言っても、サイコパスを避けるのは難しいと考えます。コミュニケーションの量が増えていく中で「あれ?」と違和感を抱く。そんなことが何度もあるようでしたら、一度距離をおいてみてください。私たちは、コミュニケーション能力の高いサイコパスに騙されやすいと言えますので、家族や友人からのアドバイスも助けになると思われます。
「もしかしてサイコパス?」と思ったら
サイコパスを性格と考えている人は「変わってくれるかも」と考えて、傷つけられても距離をおくことを考えないかも知れません。しかし「他人の声から感情を読み取れない」「顔に浮かんだ恐怖を識別できない」「脳の共感にまつわる部分など、健常の人とは脳領域にも違いがある」といったサイコパスに関する科学的な研究結果を見ると、改善を期待するのは難しいように見えます。
最近では凶悪な罪を犯したサイコパスに対する有望な治療プログラムなどもあるようですが、効果には疑問を抱いてしまうというのが筆者の感想です。
社会に適応しているサイコパス傾向の人から被害を受けた場合、なるべく早く距離をおくようにするのがお勧めです。会社の上司、同僚など、どうしても接触を避けられない相手の場合、利用されないよう気をつけながら過ごしてみてください。サイコパスは、お人好しで被害に遭いやすい人を選ぶのが得意です。警戒しておくことで、選ばれる率を減らすという効果も期待できます。
「こんな人たちもいるのだ」と知っておくことで、対人関係トラブルに遭ったときのショックを軽減するというのも、非常に重要だと思います。世の中には悪い人もいますが、そうでない人もたくさんいます。「自分にも悪いところがあったのかも」など、自分を責める傾向のある人は、特に気をつけてください。
引用文献・参考文献
*1 東本愛香, & 吉岡眞吾. (2019). サイコパス (反社会性パーソナリティ障害) と治療 (特集 パーソナリティ障害と薬物療法). 精神科= Psychiatry, 35(2), 205-211.
*2 Kevin Dutton(2013). サイコパス秘められた能力 NHK出版
*3 ロバート・ヘア(2000). 診断名サイコパス 身近にひそむ異常人格者たち 早川書房
*4 See Sarah Wheeler, Angela Book and Kimberley Costell,”Psychopathic Traits and the Perception of Victim Vulnerability Criminal Justice and Behavior 36, no.6 (2009):635-48
Kent A.Kiehl, Joshua W. Buckholtz (2010) Inside the Mind of a Psychopath SCIENTIFIC AMERICAN MIND
【最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。アーカイブはこちら