北海道・知床半島沖の観光船「KAZU I(カズ・ワン)」の沈没事故で、運航会社「知床遊覧船」(斜里町)が昨年6月、船舶安全法に違反しアマチュア無線を船との連絡手段にしていたとして、国土交通省から行政指導を受けていたことが10日、分かった。同社関係者によると、連絡手段としてアマチュア無線を日常的に使っていたという。同社では事故当時、無線用のアンテナが破損し、衛星電話も故障していたことが判明している。
国交省は10日、携帯電話を通信手段とする小型旅客船の緊急安全対策を実施すると明らかにした。航路全域で通話可能かどうか確認し、携帯電話会社の通信エリアマップから外れていた場合は常時通信が可能な手段に変更を求める。
検査を代行している「日本小型船舶検査機構」(JCI)の内規ではこれまで、航路の一部が通信エリアマップから外れていても、事業者から「つながる」との申告があれば、通信設備として容認していた。だが、国交省はJCIに対し、従来の内規を変更するよう指導。エリア外になっていた場合は25日までに変更を求めるという。
一方、斉藤鉄夫国交相は10日の閣議後記者会見で、小型旅客船の安全対策を議論する国交省の有識者検討委員会の初会合を11日に開くと表明した。検討委のメンバーは海事法制や公共交通の安全対策に詳しい専門家や弁護士、地元観光船事業者の代表ら14人で構成。安全管理規程の実効性確保や監査・行政処分の在り方などを議論する。