くじら日記

新館長の思い「五感でクジラ知って」

産経ニュース
イルカの飼育に取り組む稲森大樹館長=和歌山県太地町立くじらの博物館
イルカの飼育に取り組む稲森大樹館長=和歌山県太地町立くじらの博物館

令和4年4月1日、筆者は歴代9人目の和歌山県太地町立くじらの博物館館長職を拝命しました。

くじらの博物館は、昭和44年、故庄司五郎町長の「捕鯨に関する資料を網羅して展示し、かつ鯨類の生態の調査研究をする」という強い思いが込められて建設されました。以来、8人の館長それぞれの考えが加わり、53年の歴史が刻まれました。

今、町は、三軒一高町長を先頭に、「過去、現在、未来」にクジラとかかわり続けるという決意のもと、くじらの学術研究都市を目指して環境整備を進めています。くじらの博物館は、その町づくりの中枢施設の一つとして、鯨類に関する教育研究と飼育展示の役割を果たすことが求められています。

館長に就任して以降、マスコミから取材を受ける機会をいただきました。「クジラの魅力は何か?」、「なぜくじらの博物館に勤めたのか?」、「飼育を専門とする館長としてできることは?」などという質問を受け、筆者のクジラ人生を振り返る機会にもなりました。

思い起こすと、今から17年前の平成17年、筆者は東京海洋大学在学中に、クジラに出会いました。

海洋生物への興味と島の生活への憧れから、長期休暇を利用し、小笠原諸島の父島(東京都)にある小笠原海洋センター(NPO法人エバーラスティング・ネイチャー運営)でボランティアをしました。同センターは、主にウミガメとザトウクジラの調査研究に努め、今も活動が続いています。

滞在中、ザトウクジラの調査船に乗る機会を得ました。ザトウクジラは大きくなると14メートル以上になる比較的大型種ですが、限られた時間しか水面にとどまらないため、その姿を捜すことは容易ではありません。

手掛かりは、呼吸によってできる巨大な噴気です。鼻の穴である噴気孔が頭頂部にあり、息を吸うために水面に上がると呼気が潮を吹くように見え、場所がわかります。これによって姿を発見すると、その方向に船を走らせ、次の浮上を待ち、少しずつ距離を縮めます。そして、とうとう、クジラを目の前にしました。

まず、鼻がある頭頂部が現れました。同時に噴気が立ち上がり、生温かさとクジラ特有の匂いがあたりを包みます。続いて見えてきたのは真っ黒でどっしりとした背中で、潜水艦の浮上を思わせます。そして、尾びれを高々と上げ、ほとんど波を立てずに水中へと姿を消しました。その姿は、なんて美しいことか。

水中にいるクジラを箱眼鏡で追うと、ようやく全身をとらえることができました。小笠原のブルーの海の中を、威風堂々と、圧倒的な存在感を放つその姿形は、今も鮮明に覚えています。当時の調査経験ですっかりクジラに魅了され、「でっかいクジラを飼いたい!」と思うまでには時間はかかりませんでした。

17年経(た)った今も、クジラへの「思い」は変わりません。くじらの博物館を訪れた方々も、私の初めてのクジラとの邂逅(かいこう)のように、五感でクジラを知り、学び、海やそこに暮らす生き物に関心を持つきっかけになってほしいと願っています。

(太地町立くじらの博物館館長 稲森大樹)

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