ウクライナでロシアの苦戦が続いている。来週9日には戦勝記念日を迎えるが、それまでに事態を大きく打開するのは難しい。
それどころか、私は全体情勢がいまのままなら「ロシアの敗北は決定的」とみる。なぜなら、強力な経済制裁に締め上げられたロシアの継戦能力は改善する見通しがない一方、ウクライナの戦闘能力は西側諸国の支援で、逆に高まっていくからだ。
ロシアはジリ貧状態で、敗北していくのか。最大の不確定要素は中国である。
結論を先に言えば、中国はギリギリの局面でロシア支援に動く可能性が高い。
習近平総書記(国家主席)にとって最大の同志は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。近い将来、台湾をめぐって米国との対決が不可避とすれば、そのとき、ロシアが加勢するかどうかは、習氏の運命をも左右する。習氏は、ここで「プーチンのロシア」を失うわけにはいかないのだ。
振り返れば、開戦直前の2月4日、習氏とプーチン氏は北京冬季五輪の開幕に合わせて北京で会談し、盟約を結んだ。それは、「米国による世界の一極支配を打破し、中国とロシアが加わった多極化体制を目指す」という誓いだった。これこそが、両氏の戦略目標にほかならない。
ロシア軍がこれほど苦戦するとは、習氏にも意外だったにせよ、自分自身の目標達成を困難にするような選択はあり得ない。最悪でも、プーチン氏が失脚しないように背後から支えるはずだ。「いまはまだ、動く局面ではない」と見ているにすぎない。