巨人ファンからも拍手を送られた。山本泰寛内野手(28)のプロ通算4本目、阪神移籍2年目での初のアーチだ。4月30日。場所は、2020年まで所属したジャイアンツの本拠地・東京ドーム。ゲームセットの瞬間は、一塁の守備に就いていた。
「みんなに少しずつだけど、成長した姿を見せられたのかな」
お世話になった巨人関係者へのお礼の意味も込められていた。慶大から16年にドラフト5位で巨人に入団したが、1軍に定着できず。自分の存在をアピールするためには、どうすればいいか。その答えが、一塁も守れるユーティリティープレーヤーだった。
「僕が一塁の練習をやり始めたのは5年目。野球の勉強にもなるし、幅も広がる。出場機会を増やすという面でも、やっておいた方がいいかなと」
本職は遊撃と二塁だが、坂本や吉川らの厚い壁に阻まれ、三塁にも挑戦した。一塁は、外国人選手もしくは日本人の大砲が守るポジションというイメージで、山本は176センチ、76キロ。周囲は本気? と驚いたが、この挑戦がいま生きている。
マルテが右脚コンディション不良で離脱中。大山も4月24日のヤクルト戦(神宮)の試合中に左膝を痛めた影響で、山本が終盤は一塁守備に就くことが多くなっている。
「難しいですよ。ランナーが出ると、いろんなケースもあるし、考えることが多い」
阪神では、昨季まで1軍に定着できなかった大卒4年目の熊谷が、内野も外野も守れるというセールスポイントで1軍に定着した。山本は「外野もとなるとセンスがないと難しい。練習しないとできないし、体力的にもきつい。彼はすごい」と尊敬のまなざしだ。
矢野監督は「もっともっと、いい野球人生にしたいと思って、ヤス(山本)はタイガースに来た。その思いを試合にぶつけてくれている」と、さらなる期待を寄せる。
守備の人で終わるつもりはない。「打つ方で結果を残して、スタメンで出たい」。目指すは不動のユーティリティープレーヤーだった。(三木建次)