――『悪政』にもかかわらず市民はおとなしい。日本の歴史で市民革命が起きたことはない、と
「明治維新も市民革命ではなかった。結局は(欧米列強による)外圧に乗った勢力による政権交代に過ぎません。なぜ市民が行動を起こさないのか、永遠のナゾですが、自発的服従というべきか、不公平な世の中を正すために戦うよりも権力にすり寄って甘い汁を吸う方がいい、と考える人が多いのでしょう」
――多くの若い世代も安定志向。選挙でも自民党へ投票している
「ひとつには、どれほど日本の政治や経済、社会がひどくなっているのか、実感できていないことがあると思います。給料が減っても生活環境が劣悪になっても、『まだ日本は捨てたもんじゃない』という意識がなかなか変わらない。まぁさすがに最近は〝底割れ感〟が広がってきているとみていますが」
――小説の力でそれを動かしたい
「そうですね。SNSやネット世論をみても、今の世の中に対して相当、不満がたまっていることを感じます。その中で『異議申し立て』をして、インフルエンサー(影響力がある人)になっている人たちが一定程度いる。そういう人の言うことは、テレビのコメンテーターとして発言している大学教授や有名人などよりも、よほどマトモですよ。僕だって発信し得る。フィクションやエンタメでの『世直し』もアリでしょう」