世界的な物価上昇の大きな要因となっている原油高が一段と強まる懸念が出てきた。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」は5日、6月も現行の増産計画を維持することを決め、ウクライナ危機で原油高が続く中、日米欧などの消費国が求める追加増産に応じなかった。これを受けニューヨーク原油先物市場の相場は一時、1バレル=111ドル台まで上昇。今後、欧州連合(EU)がロシア産原油の禁輸に踏み切ることで需給がさらに逼迫し価格の上昇圧力が高まる恐れもある。
OPECプラスは5日の閣僚級会合で、6月も5月と同じ、生産量を日量43万2千バレル引き上げることを決めた。サウジアラビアなど中東の産油国の間には、市場への影響力や高値を維持したいという思惑もあり、日米欧の追加増産に応じるよりもロシアとの協調を優先させた形だ。
OPECプラスの発表後、5日のニューヨーク原油先物相場は続伸。指標の米国産標準油種(WTI)の6月渡しが一時、1バレル=111・37ドルまで上昇し、終値も前日比0・45ドル高の1バレル=108・26ドルと3月下旬以来、約1カ月半ぶりの高値となった。
さらに、ウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁の影響で今後、ロシア産原油の供給減も見込まれる。
ロイター通信によると、OPECのバルキンド事務局長は4日、「他の産油国がロシアからの原油供給を代替するのは不可能」と強調。4日にEUが発表したロシア産原油の禁輸が実行され、EUがロシア以外の産油国からの調達を一斉に進めれば「需給が逼迫し、さらなる原油価格上昇につながる」(第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミスト)との指摘も出ている。
産油量や原油価格はOPECとOPEC非加盟のロシアが協調することで主導してきた経緯がある。
ロシア産原油の供給懸念はあるものの、OPECが価格下落につながる追加増産に応じる可能性は低く、当面は原油価格の高止まりやさらなる高騰に対する懸念が強まりそうだ。
一方、世界第2位の原油消費国の中国では新型コロナウイルス感染拡大に伴い上海市でロックダウン(都市封鎖)を行っており、中国の景気減速が原油需要の減少と価格の下落圧力につながる可能性もある。また、今後のウクライナ情勢や対露追加制裁の行方も原油相場を大きく揺さぶるとみられる。(永田岳彦)