ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は英議会での演説で『ハムレット』を引き、「生きるべきか、死ぬべきか」と問うた。だが、後に続く以下のセリフを、多くの日本人は知らない。
「どちらが男らしい生きかたか、じっと身を伏せ、不法な運命の矢弾を耐え忍ぶのと、それとも剣をとって、押しよせる苦難に立ち向い、とどめを刺すまであとには引かぬのと、一体どちらが」(シェークスピア『ハムレット』新潮文庫)
―いまは「男らしい」ではなく、「高貴な」と訳した方がよいかもしれない。
いずれにせよ、英国エリザベス朝時代を代表する作家と、(国際法上許された自衛権行使すら批判する)令和日本の学者やコメンテーターとの乖離(かいり)は本質的である。
「戦争反対」しか言えない連中は男らしくない。いや、高貴でない。つまり卑しい。
「自分は守るが他人は助けない」。命が助かれば、それでよし…。何とも卑しい。少なくとも私は剣を取り、後には引かぬ。 =おわり
■潮匡人(うしお・まさと) 評論家・軍事ジャーナリスト。1960年、青森県生まれ。早大法学部卒業後、航空自衛隊に入隊。第304飛行隊、航空総隊司令部、長官官房勤務などを経て3等空佐で退官。拓殖大学客員教授など歴任し、国家基本問題研究所客員研究員。著書・共著に『安全保障は感情で動く』(文春新書)、『誰も知らない憲法9条』(新潮新書)、『尖閣諸島が本当に危ない!』(宝島社)など。