東武鉄道は、3機目となる蒸気機関車(SL)の復元作業を埼玉県久喜市の車両基地で進めている。7月に栃木県内で運行を開始する予定だ。SLを復元して運行する取り組みは大手私鉄では他に例がなく、集客力向上の軸と位置づけて力を注いでいる。
3機目として復元が進むのは、グループの東武博物館が日本鉄道保存協会から譲渡された「C11形123号機」。廃車となってから50年近く北海道で保存されていた。
今年4月に試運転を始め、試験線の約800メートルの区間を数往復し、車輪などに異常がないかを確認した。今後は営業線などで試運転を重ねて7月の運行開始に備える。6月には既存の2機とつないで走らせるイベントも予定されており、鉄道ファンの注目を集めそうだ。
東武鉄道は、東武日光線の東武日光駅―下今市駅間と東武鬼怒川線の下今市駅-鬼怒川温泉駅間で2機のSLを走らせており、3機目もこれらの路線に投入する。担当者は「3機体制によって運行が安定する。早く運用を軌道に乗せたい」と強調する。
東武鉄道は平成29年8月、東日本大震災の影響で落ち込んだ観光需要の回復を目指すため、日光・鬼怒川地域の活性化の目玉として約50年ぶりにSLの運行を始めた。取り組みは成功し話題を集めてきたが、新型コロナウイルス感染拡大長期化の影響で再び苦境に陥っており、SL事業を充実させ需要の喚起を図る構えだ。(中村智隆)