ぐらつき始めた公共交通 観光と一体化した「MaaS」に活路を

SankeiBiz

「観光MaaS」を介して相互の関係構築を

そんな中、観光客の移動手段の確保策として注目されているキーワードが「Mobility as a Service」、略して「MaaS」(マース)だ。エリア内にある交通機関が連携するサービスのことで、例えば個人旅行者が新幹線や飛行機で主要な駅まで移動した先のエリア内で連携のとれた移動手段を整備する手法の一つになるのではない期待が高まっている。

観光業界に先んじてMaaSに興味を持ったのは公共交通の業界だった。欧州で公共交通の政策として注目されたためだ。遅れて観光業界も「観光MaaS」に着目した格好だ。

ただ、MaaSが日本で検討され始めたのは2018年頃の話だが、4年が経ったいまも「これぞ」という成功事例がまだ創出されておらず、摸索中の事業者がほとんどだ。

なぜ成功事例が生まれにくいのか。

観光業界をよく知る専門家と、公共交通と観光業界の政策を担当した経験者と意見交換をする中で次のような課題が見えてきた。

まず、観光業界の関係者と公共交通の関係者の文化が異なる。観光関係者はマーケティングやセグメンテーションをしっかり行い、どのターゲットを顧客にするかという分析を行う習慣がある。

一方、公共交通ではマーケティングやセグメンテーション、ターゲティングなどという発想が弱い。運賃の上限が決まっており、乗車拒否はできない、安全対策への徹底が要求される─など規制が多いため、いかにたくさん乗せるかが重要になる。

そのため公共交通の担当者は、不特定多数の観光客に向けてサービスを作ってしまう。公共交通事業者が創るMaaSの多くは売上増につながるものが少なく、“もうからない”と言われてしまいがちだ。

観光関係者がMaaSなどのモビリティサービスを検討すると、これまで公共交通の業界と交流を持っていない人が多いため、業界のいろはが分からず、公共交通の事業者と関係構築ができずに喧嘩別れするケースもよく耳にする。

第三者として感じることは、両者の交流が予想以上に少ないことだ。しかし考え方を変えれば、マーケティングが上手く観光客のニーズを把握しやすい観光業界の関係者と、安全運行のスペシャリストである公共交通の関係者がタッグを組んで検討すれば、良きものが生まれそうであるとも言える。

観光客のニーズを捉えた柔軟なサービスが登場し、地域経済や公共交通を活性化してくれることを期待する。

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