北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU Ⅰ(カズ・ワン)=19トン」が浸水した事故で、第1管区海上保安本部(小樽)は25日、新たに子供1人を救助した。搬送時に意識はなかった。これまでに10人の死亡が確認された重大事故の背景には、運航会社が強引な出港をしていた可能性が指摘される。船長はSNSで「ブラック企業で右往左往」ともらしていた。
1管などは知床半島東側の根室海峡にも捜索範囲を拡大した。船は沈没している可能性があり、音波探知機(ソナー)で海底も調べる。1管は業務上過失致死や業務上過失往来危険の疑いでの立件を視野に捜査する。
乗組員は豊田徳幸船長(54)=斜里町=と、曽山聖甲板員(27)=東京都調布市。運営会社「知床遊覧船」は事故のあった23日が今シーズン最初のクルーズで、同業他社はまだ営業していなかった。
港のある斜里町では同日未明に強風注意報が、朝からは波浪注意報も出され、同業他社の船長は「今日はやめておいたほうがいい」と助言していた。同町ウトロの民宿経営者は「引き返す判断はできたのではないか。観光の時期だし、無理して出したのかもしれない」と声を落とす。