ソフトバンク・高谷裕亮2軍バッテリーコーチ(40)がコーチとして1年目のシーズンを送っている。昨年に現役を引退して筑後で若鷹と一緒に成長する日々の中で、どんなことを感じているのか。
「僕は教えるという感覚より、選手が持っている課題とか。どうなっていきたいのか、それに対して一緒にアプローチして。人それぞれ、捉え方も体の使い方も違うし。そういう難しさはあるかなと思いますね。『こうしなさい』というのは僕の中ではないです」
2007年ドラフト3位で入団。通算201安打と絶対的な正捕手ではなくとも、縁の下の力持ちとしてグラウンドの内外でチームに貢献した。コーチとなり選手に伝え続けていることは「失敗しろ、と。成功体験ばかりだと失敗したときに身動きが取れなくなるので」。勝敗よりも内容が重視されるファームだからこそ、結果を恐れずに挑戦しようとする選手の背中を押している。
打撃コーチなら打率や本塁打、得点。投手コーチなら防御率や与四球、奪三振など受け持つ部門があるが、貢献度が数字にあらわれにくい捕手というポジション。高谷コーチが大切だと思う数字を問うと、バッテリーとして試合を作ることだと強調した。
「しっかり試合を作ること。ワンバウンドを止めたり盗塁を刺すとかありますけど、結果ホームベースを踏まれなかったら(失点は)ゼロなので。3連戦の頭とか、細かいことはありますけど。まずはゲームを作ること。投手との共同作業なので」
1軍には甲斐という絶対的な正捕手がいるが、そこに続く2番手捕手の不在がチームの課題でもある。高谷コーチも「1軍で戦えるように成長してほしいですよね。よく(甲斐)拓也に続く捕手がと言われますけど。レギュラーを取るんだという意気込みでやってもらわないと、どんどん(甲斐との)差は開くので。飛び越えて、使いたいと思ってもらえるような取り組みを」と力を込めた。第2の人生として、鷹の扇の要を強くしようと自身の経験を伝え続けている。
現役通算15年。渋さが光ったベテランは、ファンからの人気も厚かった。コーチになっても「相変わらず応援していただいています。本当にありがたいです」と頭を下げる姿が、高谷コーチらしかった。(竹村岳)