野球選手なども最後に出場する試合を、引退試合と呼ぶが、棋士にも最後の一局がある。引退試合で見事なホームランを打つなどという例は、巨人の原辰徳監督などごく一部を除いて、あまり記憶がない。公式戦だから、当然花を持たせる訳にはいかないが、本人も最後を意識すると、肩に力が入るせいかと思う。
前期(2021年度)までで引退となる人は、桐山清澄九段、小林健二九段、田中寅彦九段、小林宏七段の4人で、上から3人が年齢で、小林宏だけが自己宣言での引退だ。
棋士の引退は最後の1局を勝ち続ければ、引退が先送りになるだけに、最後にどんな将棋を指すのかは、遠くない将来、同じ運命を持つ私にとって、興味のあるところだった。
桐山は本欄でも何回か取り上げたが、この1局を負けると引退という一番を、2年連続ではね返してきた。その将棋はいかにも「いぶし銀」の異名通りの指し口で、いずれも完勝だった。
ただし今回は、竜王戦で4組に昇級できない時点で引退が決まり、4月下旬の対局が最後となる。
小林健の対局は、竜王戦6組の対神崎健二八段戦。フリークラス転出のため、この3月31日の誕生日で65歳となり、負けると定年で引退となる。