めしとおかずのバランスを常に気にしながら食べるという、俺のケチな性癖のタガを外す。何も考えず、食べたいだけ食べたいように食べればよい。わさびも使いたいだけ使うがいい。
本当においしい。酢飯と酢締めの酢加減も天才的。
半分ぐらい食べても、まだ、最初の一口のおいしさが鈍っていくことはない。
そして、これはやはり弁当である。弁当の、弁当たる軽快さというか、気取らなさというか、食べやすさというか、割り箸が似合うこの佇まいが俺にはタマラン。ちびりそうだ。
箸を置いて、窓の外を見る。頭に雲を引っ掛けた富士山、見ることも忘れていた。もう後方に去りかかっている。バイバーイ。
酒をクピリと飲む。ぐい呑みでもあるとよかったな。今度、そういう旅用のプラスティック製ぐい飲み、探そう。
最後の飯粒ひとつまで、おいしくいただいた。1300円は高くない。また買うまた食う。 (マンガ家・ミュージシャン、久住昌之)