記者発

科学の懸け橋も崩した露の暴挙 科学部・松田麻希

産経ニュース
欧州とロシアの共同探査計画「エクソマーズ」の探査機のイメージ(欧州宇宙機関提供・AP)
欧州とロシアの共同探査計画「エクソマーズ」の探査機のイメージ(欧州宇宙機関提供・AP)

火星探査の取材を担当しているが、欧州がロシアと共同で進めてきた探査計画「エクソマーズ」が一時停止したことには、同情を禁じ得なかった。同計画は、当初のパートナーだった米国が離脱したり、コロナ禍の影響で探査車の打ち上げが延期されたりと苦労が続いた。ようやく今秋にもロシアのロケットで打ち上げられる計画だったが、ウクライナへの軍事侵攻を受けて火星への足を失った。

ウクライナ侵攻が始まってから明日で2カ月を迎える。この間、科学界では欧米を中心にロシアとの協力体制を打ち切る動きが相次いだ。

侵攻開始翌日の2月25日には、米マサチューセッツ工科大が、10年以上支援してきたロシアのスコルコボ科学技術研究所に対し、関係を打ち切ると通知。ドイツ連邦教育研究省は同日の声明で、科学研究や教育におけるロシアとの協力を停止するとした。その後、欧州の他の国々も追随した。欧州委員会は3月4日、「研究、科学、イノベーションにおけるロシアとの協力関係を停止する」と発表。7年間で総額955億ユーロ(約13兆円)を投じる研究助成プログラムから締め出した。

「ロシア外し」は、ロシアの軍事行動に反対の意思を示すとともに、同国の外貨獲得を防ぐものだ。さらに科学研究は、成果が民生と軍事両方に使われる「デュアルユース」の問題もはらむ。間接的にでも戦争に加担するのを避けねばならないこともある。

ただ、科学研究における国際協力は「平和の懸け橋」としての機能も期待されてきた。たとえば欧州合同原子核研究所(CERN)は「平和のための科学」を標榜(ひょうぼう)し、第二次世界大戦後の欧州に結束を促すため、1954年に設立された。米科学誌サイエンス(電子版)の記事によると、ソビエト連邦がチェコスロバキアやアフガニスタンに侵攻した際もソ連の科学者を追放しなかったという。

国際協力なしには立ち向かえない、気候変動や感染症といった全地球的な課題の解決に向けた研究が停滞の危機にさらされている。研究者個人の手が及ばない戦争のあおりを受け、心血を注いできた研究がついえる事態にも疑問が残る。科学界の分断が何をもたらすのか、国際社会の動向を注視していきたい。

【プロフィル】松田麻希

平成20年入社。東京本社で経済本部、文化部などを経て30年から科学部。現在の主な担当はIT分野だが、脳科学や宇宙探査なども取材する。

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