「競争しない戦略」で高収益を誇るキーエンス 企業は「競争の弊害」をもう無視できない

SankeiBiz
「競争は企業や人を成長させる」という説は自明のものではない(画像はイメージです / Getty Images)
「競争は企業や人を成長させる」という説は自明のものではない(画像はイメージです / Getty Images)

競争の弊害

先月、全日本柔道連盟が毎年開催している個人戦の全国小学生学年別大会を今年から廃止すると発表しました。「小学生の大会において行き過ぎた勝利至上主義が散見される。心身の発達途上にある小学生が勝利至上主義に陥ることは、好ましくない」というコメントもあったそうです。

「競争の場にいることによって、お互いに切磋琢磨し、能力が伸びていく」という理想とはかけ離れた副作用が発生し、もはや負の側面の方が大きくなったという判断です。ニュース記事では「勝利のために無理な減量に取り組んだり、危険な技を繰り出したりしている」という声が紹介されていました。

「競争」の弊害は、子供にとってだけでなく、実は企業にとっても無視できないものと言われています。今回は「競争」との向き合い方について事例を見てみたいと思います。

「プレイヤーが消耗しやすい競争」とは

「競争」によって、技術革新が生まれたり、サービスが進化するので「競争」が存在することは良いことだと一般的に言われがちです。しかし、同じ分野・同じ製品での競争が発生すると必ずしもそのような良い循環にはつながりません。

その大きな原因は、「競争は短期間での結果を強く求められる」ことにあります。そして、「短期間で結果が求められる競争」では、技術革新よりも消耗の激しい我慢大会になってしまうものなのです。

競争が生む3つの「負のサイクル」

1:強烈なコスト削減

技術革新によるブレイクスルーを待っている暇はなく、すぐに価格競争が始まります。そして価格競争も技術革新によってではなく、まずは人件費や材料費(これも材料を作る人々の人件費)に手を付けることになります。

2:瑣末な差別化への投資

前の製品と違うこと、他社の製品と違うことを短期間で実現しようとすると、なんのための機能やサービスなのかがわからないようなものが付加されていきます。大きな成果を産むような技術革新への人材・時間の投資が行われにくくなるのです。

3:割引の横行

もはや勝つために競争しているのか、競争するためにマーケットに残っているのかがわからないくらい割引やリベートによる「シェア維持」が始まります。割引によって下がってしまった「顧客の相場感」を戻すのはとても大変なことです。そして、これは需要の先食いに他なりませんので、すぐに行き詰まります。

実は、日本人はこの「我慢大会」に強いという側面がありますし、技術革新よりも我慢強さで勝ってきた歴史もあります。いまだに、すでに競争が激しい分野に「我慢強さ」を第一の武器に乗り込む新規参入も少なくないくらいです。しかし、多くの組織は、前述のような、競争の生み出す「負のサイクル」によって疲弊していきます。人材も同様です。

(1)強烈なコスト削減(2)瑣末な差別化への投資(3)割引の横行―携帯電話のキャリアなどは、みなさんもすぐに理解していただけるくらいここであげた3つの負のサイクルによって疲弊していることがわかりますね。冒頭の柔道の例のように、まさに「勝利のために無理な減量に取り組んだり、危険な技を繰り出したりしている」状況になるのです。

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