春の低山は花木を愛でながら歩くのが楽しみだ。町のサクラ(ソメイヨシノ)が終わると、山のサクラが咲き始める。サクラと時を同じくして咲く赤紫色のミツバツツジ、若葉が目立つ時期に朱色の花をつけるヤマツツジ。ふんわりと匂いを漂わせるフジの花。今日は何に出合えるだろうと思いをはせながら山に向かう。
埼玉県飯能市にそびえる天覧山は、春の花木を楽しめる素敵な低山だ。登山口の飯能中央公園はサクラの名所で、こちらは例年4月上旬が見頃。サクラの花が終わる頃、登山口から山頂に向かう道中のミツバツツジやヤマツツジが咲き始める。朱色のヤマツツジは若葉の緑によく映えて美しい。
飯能駅から歩き始めて1時間もあれば山頂に到着してしまう。幼稚園児が遠足で歩いていたり、軽装のおばあちゃんが息を切らして歩いていたりする。地元の人たちにも愛されている山だ。山頂直下には十六羅漢という石仏群がある。岩の斜面のあちこちに羅漢像や石仏が祀られている。静かに微笑んでいたり、考え事をしていたり、さまざまな表情の羅漢様を見るのが好きだ。
こんなにすんなり手軽に山頂に立てるのに、山頂からの眺めはすばらしくて、飯能の町並みの奥に丹沢や奥多摩の山々が連なっている。条件に恵まれれば富士山も頭が少しだけ見える。
天覧山から尾根道を歩いて、隣の多峯主山(とうのすやま)まで足を延ばすのがいつものパターンだ。雑木林の雰囲気がよく、とくに新緑の時期はやわらかな緑に覆われている感じが麗しい。多峯主山も眺めはよく、目をこらせばスカイツリーや東京の高層ビル群も眺められる。
今年は4月に入ってだいぶ暖かい日が続いている。4月半ばから下旬がツツジの見頃かなと思っていたけれど、案外早く咲いてしまうかもしれない。天気が良さそうな日に休みが取れたら、さくっと足を運んでみよう。満開の花景色に出合えればラッキーだし、そうでなくても草花や新緑、見どころはたくさんあるのだから。