決勝打を放ったのは、不振で打順を8番に下げられた昨季の本塁打王だった。オリックスの杉本が五回無死一、三塁から、左前に先制適時打。一塁ベース上で安堵(あんど)の表情を浮かべたのも無理はない。実に24打席ぶりの安打だったからだ。
チーム打率がリーグ最下位の1割台と苦しむオリックス打線の中でも、とくに「重症」だった。内外角の揺さぶりに対応できず、試合前の時点で打率は1割1分3厘。「数字が悪い。それだけ」と中嶋監督は前日の5番から8番への打順降格を決断した。
不振にあえぐ中、指揮官から「もうお前には期待してない」と冗談っぽく声をかけられた。中嶋監督らしい励ましに「気が楽になった。暗くならないようにと思った」。先制打の場面。簡単に2球で追い込まれたが、「がむしゃらさを出していかないと」と外角低めの変化球に食らいついた。
打線はまだ本調子ではないが、「こういうヒットが増えれば乗っていける」と杉本が復調のきっかけをつかんだのは大きい。先発した山岡は6回無失点と粘りの投球を展開し、遊撃の紅林を中心に好守備もあった。チーム状況が上向きつつあるのは確かだ。(鮫島敬三)