歴史的な低迷にあえぐチームに頼もしい新戦力が現れた。阪神の新外国人、ウィルカーソンが6回3安打1失点と好投し、来日初登板で初勝利。3年ぶりに4万人超が詰めかけた甲子園のお立ち台で、「こんなにたくさんのファンの前で投げられて本当にうれしい。皆さんのサポートのおかげ」と喜んだ。
直球の球速は140キロ台半ばだが、多彩な変化球をコーナーに投げ分け、的を絞らせなかった。中盤からは「相手の狙いを外していく意図で使った」というチェンジアップも有効に決まり、打者を幻惑。一回、先頭の吉川に右前に運ばれて以降、六回1死まで無安打投球を続けた。
六回、岡本和の左前適時打で1点を失ったが、浮足立つことはなかった。丸を高めのチェンジアップで見逃し三振、中島はスライダーで中飛に仕留めてピンチを断ち、「初回をゼロで抑えられたのが大きかった。テンポやリズムを考え、落ち着いて投げ切れた」とうなずいた。
大学時代に右肘の手術を受け、一時は食品会社で働いた経歴を持つ苦労人。藤浪と伊藤将が新型コロナウイルス感染で離脱し、先発陣の台所事情が苦しい中、チームに今季初の連勝をもたらした。矢野監督は「登板を重ねて研究されても、やりくりできるボールの質と制球力がある。ここからタイガースの大きな力になってくれると思う」と期待を込めた。(上阪正人)