ロシアのウクライナ侵攻を受け、国際機関や多国間会議にロシアの出席を認めるかどうかが国際社会の焦点となる中で、岸田文雄政権が対応に苦慮している。先進7カ国(G7)の米欧諸国はロシアを排除し、圧力を強めたい考えだが、途上国との間に温度差がある。今夏以降、アジアでは日米露がメンバーに名を連ねる首脳会議や閣僚会議が相次ぎ開催予定で、日本政府はG7と途上国の間のバランスに腐心しているのが現状だ。
G7は3月の首脳声明で「国際機関や多国間フォーラムは、もはやこれまで通りロシアとの間で活動を行うべきではない」とした。国際機関の最たる存在が国連といえる。国連総会は今月7日、米国などの主導で国連人権理事会でのロシアの資格停止を賛成多数で決めた。
目下の焦点は米ワシントンで20日に予定されるG20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議だ。議長国インドネシアはロシアのオンライン参加を認める考えとされ、米国などと隔たりがある。日本は鈴木俊一財務相らが出席するが、ロシア出席に関する態度は明確にしていない。松野博一官房長官は15日の記者会見で「G7各国やインドネシアと緊密に連携しながら適切に対応する」と述べるにとどめた。
G20は11月に首脳会議が予定される。政府関係者は「G7首脳がプーチン大統領と同席することは考えにくい。出席が認められるならG7で出席をボイコットする展開すら考えられる」と指摘する。インドやブラジルなど他のメンバー国の動向次第で、G7の対応だけが浮き上がりかねないリスクもある。
アジアでは、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議が7~8月、首脳による東アジアサミット(EAS)が10~11月に開かれる見込みで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も11月に開催される。いずれも日米に加え、ロシアがメンバーに入っている。
首相は大型連休を利用し、インドネシアなど東南アジア諸国を歴訪する方向で調整している。外務省幹部は「東南アジアは欧米から価値観を押し付けられることを嫌う。G7としての働きかけには聞く耳を持たないが、日本のいうことなら聞いてくれることはある」と語る。首相には対露制裁に関し、G7と途上国の温度差を埋める役割も求められている。
(千葉倫之)