ウクライナ侵攻で、ロシア国防省は14日、黒海艦隊旗艦の巡洋艦「モスクワ」が沈没したと発表した。同艦は露海軍の象徴的な存在。米国防総省のカービー報道官は14日、米CNNテレビに対し、「モスクワ」の沈没は露黒海艦隊全体への「大打撃」になるとし、露軍による黒海からの作戦能力に影響を与えるとの見方を明らかにした。
露国防省によると、「モスクワ」では14日、火災が起き、弾薬に引火して爆発が発生。修理のため曳航(えいこう)中に暴風に遭い、復元力を失って沈没した。乗員は避難していた。火災原因は調査中としている。ウクライナ軍はこれに先立ち、南部オデッサ近くの黒海海域で、対艦巡航ミサイル「ネプチューン」2発を命中させたと発表していた。
カービー氏はネプチューンの射程などから判断してウクライナ側の主張が「妥当であり、(ミサイルが命中した)可能性がある」と指摘。その上で、「(『モスクワ』は)黒海洋上を支配する彼らの試みの重要な一部をなし、その能力に影響を与える」と語った。
露メディアによると「モスクワ」は露海軍最大のミサイル巡洋艦の一隻で、旧ソ連時代の1983年に就役。P1000対艦ミサイル16基や130ミリ艦砲などを装備。2008年のジョージア(グルジア)侵攻や15年のシリア内戦への軍事介入などに従事してきた。
ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問によると、「モスクワ」は攻防が続く南部ヘルソン州の防空を担い、オデッサへの上陸作戦を支援する任務も担っていた。英国防省は15日、同艦が海上司令でも中心的役割を果たしていたとし、露海軍は運用の見直しに迫られると分析した。
ネプチューンはウクライナ軍が自国で開発した最新鋭対艦巡航ミサイルで、射程は従来保有していた同種ミサイルの2倍以上となる280キロ。保有数は不明だが、「モスクワ」に損傷を与えたことが事実なら、同軍の士気を高めるほか、露軍艦艇が南部に接近しにくくなる抑止効果が働き、露軍による上陸作戦や海上封鎖に影響を与える可能性も指摘されている。
一方、露著名軍事専門家のカーシン氏は地元メディアで、露海軍にはより高性能な軍艦があり、旗艦機能を担えると主張。「(『モスクワ』の)損失は名声だけのもので、軍事的に大したものではない」と強調。露軍が報復攻撃を強める可能性も指摘されている。