宮城、福島両県で最大震度6強を観測した地震から16日で1カ月となる。東日本大震災から11年を迎えたばかりの被災地に再び津波が到達し、深夜の発生と停電が重なる中での避難行動という特有の課題も浮かび上がった。専門家は避難経路の確認など事前の備えの重要性を訴えている。
地震は福島県沖を震源とし、3月16日午後11時36分に発生。宮城、福島両県沿岸一帯に津波注意報が出され、17日未明にかけて最大30センチの津波が到達した。この地震で3人が死亡、6人が重傷を負ったほか、宮城で延べ約4万5千戸、福島で同約10万5千戸など広範囲で停電するなどの被害が出た。
震度6強を観測し、20センチの津波が確認された福島県相馬市では最大228人が避難。隣の同県南相馬市では少なくとも約630人が避難所の利用や車中泊をした。震度6弱で30センチの津波を観測した宮城県石巻市でも400人以上が避難した。いずれも東日本大震災で津波被害を受けた地域で、住民の避難意識の高さが行動につながったとみられる。
一方、津波の心配がない内陸部では、揺れが強くても避難した人は多くなかった。いずれも震度6強を観測した福島県国見町は68人、宮城県登米市は3人、同県蔵王町は6人にとどまった。登米市の担当者は「(発生時間が)夜遅く、自宅にとどまった方がいいと考えた人が多かったのではないか」と振り返る。
深夜の避難ならではの課題も見えた。相馬市の担当者は地震発生後、自宅から役場へ自転車で駆け付けたが「道路の地割れや隆起があり、慣れた道でも怖かった。避難する人も危険を察知するのは難しかったのではないか」と語った。停電が発生すれば、外の様子や家の中の状況が分かりづらく、避難を始めることさえ難しい場合もある。
今回震度6強を観測した5市町では、いずれも夜間を想定した避難訓練を実施していない。ある自治体の担当者は「訓練とはいえ、実際に停電させるわけにもいかず、街灯など明かりがある中でやっても仕方ないのではないか」と話した。
夜間の避難訓練を監修した経験がある「地域防災支援協会」の三平洵(じゅん)代表理事によると、就寝中に地震が発生し、慌てて起き上がると転倒リスクが高まる。津波の恐れがなく、自宅に損壊被害などがなければ、「ただちに避難する必要はなく、落ち着いて行動してほしい」と訴える。
ただ、津波の危険が迫っている場合は、ライト付きのヘルメットなどで足元を照らし、路面状態を確認しながら避難することを推奨する。三平氏は「真っ暗な中で行動するのは難しい。日頃から避難経路を確認しておくなど事前の備えが大切だ」と強調した。