現代史において、ヒトラーやスターリンの悪逆ぶりは認定されている。そしていまも多くの精神科医は、ヒトラーやスターリンが精神疾患を持っていたと考えている。しかしそれは、そうしたほうが歴史を語るときに都合がいいからではなかろうか。ヒトラーとスターリンは、人類史上もっとも多くの人々、それこそ何百万、何千万の人々を殺戮(さつりく)したからである。
いくら戦争とはいえ、これを正常な人間が行った行為と思うことは、現代人の人間観、価値観に反している。そこで、プーチン大統領もまた、ヒトラーやスターリンの再来ではないかと言われるようになった。主権国家に一方的に侵攻し、無差別攻撃を繰り返すようなことはけっして許されるべきではないというのが、西側の主張だ。
しかし、ヒトラーもスターリンも〝狂人〟とは言い難い。まず、ヒトラーだが、米国の国家記録保存館(ナショナルアーカイブ)には、「ヒトラーのメディカル・レポート」が保管されており、それによるとヒトラーは頭脳明晰で記憶力も抜群、普通の人間をはるかに超えた能力の持ち主であったという。
実際、ドイツ海軍の最高司令官カール・デーニッツ大将もそのように証言しており、また、ドイツ国防軍最高司令部総長ヴィルヘルム・カイテル元帥も、「(ヒトラーの)軍事問題についての知識は驚くべきものであった。ヒトラーは世界中の陸海軍の組織、武装、指導部、装備に精通しており、ひとつといえども誤りを指摘することはできなかった」と証言している。ただ、側近たちが指摘するのは、ヒトラーがなにを考えていたのか皆目わからなかったということだ。