(セ・リーグ、中日1x-0阪神=延長十回、2回戦、中日2勝、13日、バンテリンD)神も仏もいないのか。悪夢のサヨナラ負け…。小川が粘投し、岩貞が、浜地が、アルカンタラがつなぐ。加治屋も力以上の奮闘だった。懸命の投手リレー。だが、点が入らなければ、野球は永遠に勝てない。最後は〝悪い予感〟がそのまま現実に。涙、涙…。
その数時間前、黒星の泥沼にあえぐタイガースに、さらなる不幸が襲いかかっていた。午後4時。球団広報が発表したのは、またしてもコロナ感染による登録抹消。藤浪、伊藤将、江越がいなくなった。伊藤将が13日、藤浪が14日の先発予定だったから、衝撃波はMAXに近い。
開幕から歴史的大惨事に見舞われている虎を守ってくれる神様は、どこかにいないのだろうか。いろんな人が、いろんな神様仏様にお願いしているはず。わがサンスポの中にも何人かいるはず。
そういえば、開幕前に矢野監督、球団社長らが必勝祈願した神様たちは、どうしているんだろうか。
1999年1月。タテジマ監督に就任直後の名将・野村克也は、必勝祈願に出向いた神社の宮司による「うちは藤村冨美男さんの時代から来ていただいています」の説明に首をかしげた。
トラ番記者に向かって「だったら、どうしてこんなに長い間、御利益がないんや。神様は寝ているのか?」。そうグチると、突然、大きくかしわでを打ち、響き渡る大声で「神様、起きろ!」と叫んだ。神をも恐れぬ所業(?)に、真横で聞いていたトラ番はビックリ仰天したものだ。
ただ、それでも優勝には全く縁がなく、御利益は星野監督就任後の2003年の優勝までいただけなかった。神様は気まぐれなのか、御利益をいただくまで時間を要するのか。
神頼みには無縁の「虎のソナタ」としても、思いつく全国の神様に、心の中で「そろそろ勝たせてくださいませ」と手を合わせておいた。そうそう、一番身近にいる神様を忘れてはいけない。現役時代は「代打の神様」と呼ばれた、本紙専属評論家でもある八木裕氏にも心の中で祈ってみた。
ちなみに、ことし唯一、阪神が勝った5日のDeNA戦は、神様・八木さんがサンスポ評論の担当だった。同じ日の当番デスクは阿部祐亮。同じ日の担当整理部長は矢田雅邦。昨夜は、再びこの3人がそろい踏み。初勝利と同じ布陣で固めて、やれることはやった。なのに…。ここまでやっても勝てないのか。
バンテリンドーム記者席でトラ番キャップ長友孝輔は、社内の必死さに苦笑いしていた。
「不幸中の幸いというか、開幕ローテに入っていた小川、桐敷がスポッと当てはまるんです。急に2軍から先発を上げてくると大変なんですが、入れ替えなしで先発できる存在が1軍にいたんですよ。オープン戦から2人を先発候補に入れた矢野監督の危機管理がうまく機能した感じです」
キャンプ以来、指揮官の口癖が「何があるか分からないから」だったが、まさかこんな状況で生かされるとは。長友は指揮官の深謀遠慮に熱くなっていた。勝利を誰よりも祈りながら。
負けが込む中でも、決してその闘志は衰えていない指揮官。代役で好投の小川を四回2死で交代させた。勝利への非情さい配だ。そんな姿を、神様は見てくれていないのか。いよいよ、涙も枯れ果てようとしている。