朝晴れエッセー

あくまき・4月13日

産経ニュース

暦が4月になると、あちこちの家では端午の節句を待ちわびているのか、早々とこいのぼりが泳いでいる。

この時期になると九州の実家では、母と兄嫁は恒例の「あくまき」を作る準備を始めていた。あくまきは、もち米を竹の皮で包み灰汁(あく)で炊いた、味も風味も独特な食べ物だ。

以前勤務していた職場で、あくまきと中華ちまきのことで話が盛り上がった。

あくまきを知る人は少なく、味の説明をするのも難しい。1人の同僚が興味を示した。職場で試食をすることとなった。

竹の皮の包みを開けるとプルンとした茶色の食べ物に友は驚き、そこから放つ匂いにもまた驚いた。

たっぷりのきな粉と砂糖をかけ、恐る恐る口にしてくれたが、最後まで美味とは言ってもらえなかった。

故郷の端午の節句には欠かせない。他のごちそうと肩を並べ祝いの席にも出てくる、存在感のある食べ物なのだ。

公園のハナショウブが咲く頃には、実家からたくさんの野菜とあくまきが送られてきていた。

それも毎年の楽しみであったが、今では2人の作り手は家族の皆に惜しまれながら天国へ行ってしまった。

母と兄嫁が作ってくれた故郷の味は、暦が4月になると、ふしぎと恋しくなる。


内山久美子(74) 大阪府吹田市

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