小林繁伝

「放出なら辞める」…球団に迫った江夏 虎番疾風録其の四(27)

産経ニュース
ホテルのロビーで戸沢球団社長(右端)と話す阪神の江夏豊=1973年11月、大阪市北区
ホテルのロビーで戸沢球団社長(右端)と話す阪神の江夏豊=1973年11月、大阪市北区

大騒ぎになった江夏VS金田監督の〝確執騒動〟は、ここからがクライマックス。もう少しお付き合い願いたい。

『急転放出』報道にすぐさま江夏が反応した。昭和48年11月28日、その日は大阪・梅田のホテル阪神で球団納会が行われた。納会が終わるとホテルのロビーで江夏が「どうなってるんですか!」と戸沢社長に詰め寄ったのである。

ロビーの片隅で話し込む2人。それを遠巻きに虎番記者たちが聞き耳を立てる。初めは小声だったが、次第に声が大きくなる。断片的だが記者たちには十分聞き取れた。

戸沢「お前の気持ちは変わっとらんのか?」

江夏「ええ、あんな監督の下ではやれませんわ」

戸沢「トレードは新聞が勝手に書いとるだけや」

江夏「けど、出されそうなムードやないですか。オレ、放出なら野球なんか辞めます」

戸沢「もう少し待て!」

会談を終えた江夏がそのまま記者たちに囲まれた。

――金田監督の下ではやれない、と聞こえたが

「そうや、あの人の下でプレーする気はない。監督が選手を殴るなら分かるが、1年に2度も選手に殴られる監督なんてどこにおる? 嫌気がさす理由は言わんでも分かるやろ」

――トレードしか道はないと思うが

「それならユニホームを脱ぐ。この件でオレがトレードを承知したら、ファンは〝やっぱり江夏が悪かったんや〟と思う。ファンに蔑(さげす)まれるぐらいなら、あっさり辞める方が男らしい」

――金田監督と話し合えば

「オレの方からは話はせん。オープン戦のときもオレは待っとった。けど、監督は逃げ腰やった。まぁ、それだけの度胸のある人やないしな」

球団は〝放出騒ぎ〟に終止符を打った。12月6日、新球団・日本ハムの三原脩球団社長が〝就任あいさつ〟のため大阪・梅田の電鉄本社を訪れた。その席で戸沢社長は江夏の正式譲渡を申し込まれる前に三原社長にこう宣言した。

「現時点で江夏を放出する意思はありません」(敬称略)

■小林繁伝28

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