電力の自由化で市場に参入した新電力の経営が悪化し、経営破綻や事業撤退が相次いでいる。なかには採算が確保できないとして契約を中途で解除し、電力供給を打ち切る事業者も出ている。
昨年来の世界的なエネルギー価格の高騰で新電力の経営は厳しく、ロシアによるウクライナ侵略の影響で電力価格は一段と値上がりしている。深刻化の度合いはさらに増しそうだ。
経済産業省は6年前、競争を通じた料金の引き下げとサービス向上を目指して電力小売りを全面自由化した。750社近くが新規に参入したが、参入促進に重点が置かれるあまり、事業者の経営監視を怠ってきた面は否めない。今後は需要家の保護と新電力の経営監視に重点を置く必要がある。
自前の電源を保有していない新電力は、取引所で電力を調達して顧客に販売している。だが、昨年からのエネルギー価格の高騰で調達価格が販売価格を上回る「逆ざや」が生じており、こうした転売モデルは行き詰まりつつある。
民間信用調査機関の帝国データバンクによると、昨年度に経営破綻、または電力小売り事業から撤退した新電力は31社にのぼった。今年度に入っても破綻する企業が出ており、電力の自由化は大きな曲がり角を迎えている。
問題は、こうした新電力が電力を供給していた顧客の保護だ。大手電力会社が当面は供給を肩代わりする仕組みとなっているが、契約切り替えの申し込みが殺到し、北陸電力などは大口の法人契約について、一時、切り替えの受け付けを停止した。
家庭用では別の新電力に契約切り替えを促すケースが多いが、その際には料金が割高になるなど、詳細な内容を告知していない場合も見受けられるという。顧客の保護に向け、契約切り替えに関して丁寧な説明を義務づけるなどのルール整備が必須である。
入札で長崎県と供給契約を結んだ新電力は、昨秋、「採算が合わない」として契約の解除を申し入れ、九州電力が供給を肩代わりする事例もあった。供給責任を果たさない新電力は市場から排除する仕組みも求められよう。
すでに新電力は電力販売で2割のシェアを確保している。新電力の自社電源の保有を支援するなど、電力安定供給に資するような制度設計に改めるべきだ。