当初、圧倒的不利と目されたウクライナが国内外の協力を勝ち得ている最大の要因は、同国が情報戦にたけていることであろう。
立役者がウォロディミル・ゼレンスキー大統領であることは、言うまでもない。米政府からの首都キーウ(キエフ)脱出の提案を断ったとされ、「独立と祖国を守るため、私はここにいる」と決然たる姿勢を示した。
その姿に鼓舞されたウクライナ国民は、軍に志願し、あるいは一般国民が火炎瓶を自作してロシア軍に立ち向かった。当初、支援に及び腰だったドイツやスウェーデン、NATO(北大西洋条約機構)非加盟のフィンランド、EU(欧州連合)非加盟のノルウェーまでも相次いで武器の供与を発表した。
ポーランドに至っては戦闘機の供与まで申し出た。国外脱出拒絶の真偽は不明だが、そのようなメッセージを発信し、自ら戦争を指揮する姿勢を示した意義は大きい。日本を含む、各国議会に向けての演説も、それぞれの国の国民感情の琴線に触れるものであった。
今、日本が学ぶべきは、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義」が信頼できるなどという夢から覚め、「自分の国は自分で守る」と腹をくくることであろう。その覚悟を最も求められるのは、自衛隊の最高指揮官である岸田文雄首相に他ならない。
■葛城奈海(かつらぎ・なみ) 防人と歩む会会長、皇統を守る国民連合の会会長、ジャーナリスト、俳優。1970年、東京都生まれ。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会幹事長。著書・共著に『国防女子が行く』(ビジネス社)、『大東亜戦争 失われた真実』(ハート出版)、『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社)。