大人も子供も何かを抱えながら暮らしている。それが日常で、必ずしも重荷でもない。いいことも、よくないことも同じ時系列で起こったり今後起こったりする。そんなことを改めて思い起こさせる映画が29日公開の「ツユクサ」(平山秀幸監督)。各自の暮らしが交差したりすれ違ったりしながら揺れ動くさまが、ゆったりとした時空間で描かれている。
主な登場人物に共通する属性に気付くと作品の本質がさらに心に染み入る。あらかじめ何かを失っている人、途中で何かを失った人、つまり喪失感を抱えた人々の物語。
それがつづられる場所は小さな海辺の町。女優の小林聡美(56)が演じる五十嵐芙美はどこからかこの地にやってきた。
なぜ来たのか、何を抱えているのか、苦悩を紛らわせるために何に逃げ込んだのか。芙美の置かれた状況の薄紙は、少しずつはがされていく。
暮らしぶりは、移住者だが土地にしっかりと根付いている。タオル工場(工場長はベンガル)で働き、仲のいい女友達(平岩紙、江口のりこ)、年の離れた親友(斎藤汰鷹)もいる。ぜいたくではないけれど、満たされた衣食住。