民間人を巻き込んだ無差別攻撃という手法も、シリアのアレッポ攻防戦などで知られているロシア軍の手法だ。ロシア軍だけではなく、その代理機関として活動している民間軍事会社「ワグネル」も裁判なしでの民間人への処刑、拷問などを各地で繰り返してきたとされている。
このような各地でのロシア政府を批判する声は、国際世論やまた国連内でも強かった。日本政府もロシアのシリアでの化学兵器使用について、調査団の任期延長を提案したが、安保理でロシアの反対で否決されたこともあった。
最近ではワイドショー民や識者の一部から、「日本はロシアの非道を批判しているが、他方でロシアと北方領土問題や資源開発などで親密な関係を築いてきたではないか」という意見を聞くことがある。その種の批判を行う人たちには、日本のロシアへの姿勢が矛盾しているように見えるのだろう。
しかしそれは妥当とはいえない。現在の国際秩序を支える点では、ロシアと友好条約を結ぶこと、民間や政府が交流しロシアとの経済的な連携を強めることと、同時にロシア政府の蛮行を批判することと決して矛盾しない。現在の国際秩序―平和主義、国際法の遵守、自由や民主主義の擁護、国連中心主義、そして人権の尊重など―を守る行為として、いずれも重要だからだ。ロシアがいま徹底的に批判されるべきは、この国際秩序を破壊しようとしているからに他ならない。
さらに踏み込んだ制裁の可能性も
ウクライナ戦争はいまだ不確実性の海の中にある。だが現状の国際秩序が、上記した諸理念を尊重する形で、「新しい国際秩序」に変化することはもはや不可避であろう。日本もその中で重要な地位を占めることは間違いない。
米国、欧州を中心にして自由と民主主義を尊重する「西側世界」中心の新国際秩序をどのように構築していくかが課題になる。対して、ロシアや中国のような権威主義的国家との対立も鮮明になっていくだろう。