「ラスコーリニコフ症候群」という言葉があるそうだ。ラスコーリニコフとはロシアの文豪、ドストエフスキーの小説『罪と罰』の主人公である。「一つの微細な罪悪は百の善行により償われる」「選ばれた非凡人は新たな世の中の成長のためなら、凡人のためにつくられた社会道徳を踏み外す権利がある」との自己中心的な考え方を指すという
▶国連安全保障理事会でウクライナのゼレンスキー大統領が訴えたロシア軍の残虐行為の数々が本当ならば、侵攻を主導してきたプーチン大統領は症候群に陥っているように思える。元大学生のラスコーリニコフは下宿に閉じ籠もっているうちに、自己を正当化する妄想を育んだ。プーチン氏も似たような状況ではないか
▶悪名高い高利貸の老女だけでなく、居合わせた妹まで殺害したラスコーリニコフは罪の意識にさいなまれるが、自らを司直の手に委ねて心の安らぎを得る。プーチン氏にはぜひ、母国の名著を読み返してほしい。