小林繁伝

ベンチの確執、知らぬふりの球団 虎番疾風録其の四(24)

産経ニュース
グラウンドで阪神の金田正泰監督(左)と握手する江夏豊=1974年
グラウンドで阪神の金田正泰監督(左)と握手する江夏豊=1974年

なぜ、阪神だけがチーム内の不和が表面化し〝お家騒動〟にまで発展するのだろう。当時の電鉄本社上層部の中には「ウチはすぐに記事にされるから」とマスコミのせいにする人もいたという。とんでもない話である。

昭和46年から続く「確執騒動」の最大の原因は、火の手が大きくなるまで見て見ぬふりをし、毅然(きぜん)とした態度を示さなかった球団フロントにある―といわれている。事実、48年の「江夏VS金田」騒動も球団が調整に乗り出したのは11月に入ってから。

それも虎番記者たちから「まさか社長は、江夏と金田監督の関係がどうなっているか、知らないんじゃないでしょうね」とせっつかれてから。そのとき戸沢球団社長は「2人の仲が良くないのは新聞を読んで知ってますよ。ただ、直接聞いたわけじゃないし…」と口ごもったという。

11月8日と12日の2日間、戸沢社長は江夏から話を聞いた。ただ、それは〝裁定〟を下すための事情聴取ではなく、社長が江夏の胸に詰まった思いを聞いてやる―という図式。江夏は思いをぶちまけた。

「ウチの監督はチームの柱になっている選手をボロクソに言いすぎる」

「打たれたことでけなされては立つ瀬がない。一生懸命やった結果なんや」

そして最後に重要な言葉を口にした。

「このままの状態では、あの監督の下ではやっていけない」

話し合いを終えた戸沢社長は記者たちに「金田監督の主張も聞かないことには結論は出せない」と語った。

記者たちはあきれた。監督と一選手を同じ土俵に上げようとする考えが根本的に間違っている。組織の中で両者の立場は違うし規律や一線がある。

「首脳陣批判を繰り返す選手に対し、球団は独自の良識で断固とした方針を打ち出すべきだ。このままではこじれるばかりでしょう」と記者たちは詰め寄った。

事ここに至ってなお優柔不断な姿勢をみせる球団。それはすでに電鉄本社上層部の「結論」が下されていたからだった。金田監督は最後まで優勝争いを演じた功労者。すでに留任発表までしている。一方の江夏は20勝投手。手放すことはできない。「両方残せ」、それが上からの指令だった。(敬称略)

■小林繁伝25

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