新潟県村上市の米菓製造大手「三幸製菓」荒川工場で2月11日、6人が死亡する火災が起きてから2カ月がたとうとしている。県警は業務上過失致死容疑で出火原因の特定を進めるとともに、安全管理に不備がなかったかを調べている。現場周辺をたどると、黒く変色した工場のシャッターが目に飛び込み、火災のすさまじさが改めて伝わってきた。
田園地帯の悲劇
火災現場から2~3キロのところに、米作り農家などが集まる集落がある。地元農家の男性が「あれからもう2カ月か」といって当時を振り返った。
「この集落にはあの工場で働いていた女性が結構いる。気心の知れた農家の婦人同士のつながりで『あなたも一緒に働こう』と誘い合って、あの工場で働いていた。まさかこんなことになるとは」
幸いこの集落で亡くなった人はいなかったが、隣の集落では犠牲者が出てしまった。「私の知人も、火災発生時に工場内で勤務していて巻き込まれた。停電で何も見えない工場内で声のする方向に走り、なんとか助かった。生死を分けたのはほんのちょっとしたことかもしれない」
火災は2月11日午後11時40分ごろ、荒川工場の敷地南側にある「Fスタジオ」と呼ばれる製造棟で発生。この棟では生地をこねたり焼いたりしていた。
県警は同15日、業務上過失致死容疑で同工場と新潟市北区の本社を家宅捜索。「なぜ火災は起きたのか。なぜ6人は命を落とすことになったのかをポイントに捜査を進めている」(県警刑事部)